2018/07/17
大岩 ヴィレッジヴァンガードららぽーと立川立飛店店長・百合部部長
『生理ちゃん』コミックス
小山 健/著
キャラの名前が生理ちゃん。作品タイトルも「生理ちゃん」。
生理ちゃん?えっ生理?そう、あの生理。人によってはめっちゃしんどいやつ。アレとか言われているやつ。
この本は生理が擬人化され、女性のもとに月イチでやってくる漫画である。やってくるというのは、本当にドアからちゃんと(時には窓から)「どーも生理です」と挨拶してやってくるという、なんだか人間のような、精霊のような、不思議な存在。たとえるなら、そう、おんなのこにとってのドラえもんのような。
生理は人それぞれ。だからみんなに生理ちゃんがいる。この一冊の中では「主婦と生理ちゃん」「女子高生と生理ちゃん」「おばあちゃんと生理ちゃん」など短いストーリーが何本も収録されている。
ただ、どんな女性のもとにやってきても、生理ちゃんがまずやることは同じだ。その名も生理パンチ。「じゃあそろそろいつものを…」とおもむろに腕をまわし、お腹にパンチ。冒頭で殴られた主婦は思わずぐええええ、と叫んでいる。そのあとやたら太い注射器を腕に刺して生理で失われる分の血液を抜く。この文章だけ読むとやたらバイオレンスなお話に聞こえてしまうが、実は生理ちゃん、女の子のことをとても大切に考えているいい奴だ。
生理のつらさが分からない旦那さんに生理パンチを食らわせて夫婦喧嘩を解決させ、既婚者の担当編集と関係を持ってしまったライターのお姉さんには「ちゃんとつけない男はダメ!」「今日来れなかったらどうしようかと思いましたよ!」と寄り添い、自分をブスだと言う女の子には「全然ブスじゃないよ」と言う。なんだかあったかい。女の子の味方だ。
生理ちゃんはいいことをいっぱい言う。私は読んでいて時々泣きたいような、しんみりした気持ちになる。その中でも一部の会話を抜粋する。男の担当編集と生理ちゃんが、女性ライターのためにナプキンを買いに行くシーン。
編集者「女性は生理があるから大変だよね」
生理ちゃん「大変なのを生理を理由にできないから大変なんですよ」
編集者「生理ちゃんは毎月迷惑がられているのに来なきゃいけないのツラくないの?」
生理ちゃん「…ツラいですけどいつか全部ひっくるめて良かったと思ってくれるんじゃないかと」
生理ちゃん…好き。と思わず言いそうになってしまうこのシーン。私たちの辛さをわかってくれていて、いくら嫌がられようともそこに関しては達観していて、いつか良かったと思ってくれれば、なんてもう母のような視点だ。
そんな大きな愛を持った生理ちゃん。この漫画に自分がすごく共感するのは、自分が婦人科に通うレベルで生理痛がひどく、検査やら薬やらで金もかかるし手間もかかっている現実があるからだと思う。昔からの体質なので正直仕方ないとは思っているが、ケロッとしている子を見ると、ちょっとうらやましいと思わないこともない。体調が悪い時は仕事中ぐええええと言いたくなることもある。というかたぶん言っている。
でもこの漫画を読んで、生理ちゃんがいるんだなって思ったら、ちょっと許せた。許せるって言い方も変かと思うが、許せた。そっか、しんどくてもしょうがないなって自分の中にストンと落ちてきた。だから、女の子には特に読んでほしいと思う。
生理ちゃん、私には見えてなかったけど、実はずっといたのかもしれない。いつかさよならする時に、ありがとうと言えるくらい心に余裕を持った大人になりたいものだ。
ー今月つぶやきー
キュアマシェリとキュアアムールが好きすぎて最近買いました。
TVとは違うバージョンの声優さんの声が聞けて音も出てめちゃくちゃ楽しいです。
『生理ちゃん』コミックス
小山 健/著