BW_machida
2022/12/28
BW_machida
2022/12/28
中医学では、不調の原因はバランスの乱れによるものとされている。薬膳の目的とは、体をニュートラルな状態に戻し、自然治癒力を高めること。それぞれの食材にそれぞれの力があると考える薬膳は、いわば「食材の力を借りた養生」だ。
仕事と子育てに追われた30代と40代。忙しさに追われながら迎えた更年期。食べることが大好きと語る著者は、薬膳の力を借りて人生の節目を乗りきることができたと当時を振りかえる。本書は著者が日々実践している食との向き合いかた、楽しみかたとその目的を綴った一冊。
心と体を機嫌よく保つために著者が実践している3つのことがある。一つは、香りの力を借りること。還暦の体はデリケート。不調の気配を感じたときはレモンやゆずなどの柑橘類やフレッシュハーブを食事やお茶に思いきり使うという。二つ目は、体をじんわり温めること。「うるおいが足りなくなった還暦の体は、急激に温めるとカラカラにひからびて」しまうから、血行を良くするルイボスティーなどで体を内側からじんわりと温めるように意識しているという。体を温めるのは、自分のエンジンをかけるためでもある。
細かく刻み、ゆっくり食べることも大切にしている。ひと口を小さくし、よく噛んで食べるようになったことで味の広がりかたに変化が現れたという。ゆっくり食事するのは胃を助ける目的もある。薬膳では「脾胃(ひい)」、つまり消化吸収機能の調子を整えることが重要とされている。口から入れたものを消化吸収して外へ出す。一見当たり前に思えるかもしれないこの一連の働きは、命の基本でもある。医学が発達していない時代には、この働きを失うことは死を意味していた。先人たちは食べて滞りなく出せることの大切さと、大変さ、その有難さを身に染みるほどよく理解していたのだろう。「食べることは生きること」であり、それが自分を大切にすることへとつながっていく。
薬膳とは、自分の状態と向き合いながら、食材を選ぶところから始まります。けれどそれは食材の力だけでなく、力を求める心と体があってこそ。食事と心と体、この3つと上手につき合い、不調や不安に戸惑いながらも乗りこなし、ともに健やかな老後へと向かいましょう!
自分で自分を喜ばせるためには、まず自分の今の体の状態を知っておくことが重要だ。年齢や悩みと向き合いながらも、健やかに生きることを楽しんでいる著者の言葉はポジティブなエネルギーに満ちている。
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