部屋の印象を大きく変える照明選びのコツと配置のヒント
小澤典代『日用美の暮らしづくり、家づくり』

完成が間近に迫った家づくり、浅川あやさんの家具選びについては以前お伝えしましたが、今回は照明の選び方を教えてもらうことにします。インテリアを素敵に完成させるポイントでもある照明。日本人は、どちらかというと部屋全体を均一に明るくすることを好む人が多く、間接照明や幾つものライトを使いこなすのは苦手かもしれません。

 

「照明の明るさというのも、好みは人それぞれですよね。私の親は、蛍光灯の白くて全体的に明るくなる照明を好みます。世代的なこともあると思うんですよ、明るいことが豊かさの象徴だった時代に育ったわけですから。それに、歳を取れば眼も衰えてきますしね。白い光の方が見やすいのかもしれません。でも、私たち夫婦はメリハリのある明かりを好むので、照明に関しても臨機応変に、同居に無理のない使い分けを考えたいと思います」

 

あやさんと真さんが好きなのは、明るすぎない白熱灯のあたたかな光。それを空間にひとつだけ設置するのではなく、スタンドやスポットライトなど幾つかの照明器具を使い、分けて配置します。

 

「同じ空間に幾つかのライトを置く場合、それぞれの高さを変えることで空間に広がりが生まれるんです。家でも店でも、以前からそのことを意識して照明を考えました。コツとしては、空間のなかに三角形ができるように配置すること。そうすることで陰影が生まれ奥行きを感じさせます。また、昼間とは違った部屋の印象を愉しむこともできます」

 

照明は空間の雰囲気を左右する大事な要素であることから、家づくりのプランを考える早い段階から平行して計画したそうです。

 

「地明かりとしてはダウンライトや裸電球を取り付けて、シンプルに空間にとけ込むようにしました。そこにデザイン的な照明を加えメリハリをつけるようにしています」

 

具体的に、新居のために購入したデザイン的な照明器具は以下のとおり。

 

かせくりシャンデリア。ダイニングに設置する予定のもの。「リバーサイドファーム」の店主によるオリジナル製品で、編み物に使うかせくり機や糸巻きなどを使いリメイクしたもの。新居は天井が高いので、それに負けないボリューム感のあるものを探したのだそう。すべて木材のパーツで出来ているのもお気に入りポイント。
ジャン・プルーヴェによるウォールランプ”ポテンス”。リビングに設置する予定。鎌倉の家でも同じものを使用していました。フレキシブルに動かすことが出来るので、シチュエーションに合わせ、壁に寄せたり中央に向けたり出来るのが便利で使い勝手がとても良い。
アンティークの真鍮ソケットのペンダント。2階の廊下に設置する予定。あやさんはアンティークの真鍮の鈍い輝きが好きだなのだそう。並べて付けて地明かりとして活用します。当初はダウンライトを予定していましたが、斜めの屋根を表しにしている為ダウンライトは綺麗に映えないと考慮し、吊り下げタイプを選択。

 

そして、スイッチやコンセントなど電気器具まわりのものも厳選しました。

 

「主役級ではないですが、スイッチなどのプレートは意外と目立つ存在です。だからいい加減にしたくはなくて「JIMBO」のNKシリーズを選びました。四角くスッキリしたデザインだと空間が締まる感じがします。店舗用には部分的にアンティークのスイッチプレートを使い、それに併せアメリカンスイッチを選びました。モダン過ぎるデザインだと少し違和感があるので」

 

 

こうして説明を受けていると、一般的には細部として捉えられる照明も、心地よい空間づくりに大きく関わってくることがわかりました。細部こそ疎かにしない。それがインテリアのプロである人の考え方です。

 

洋館に使われていたガイシ(絶縁用の部品)は、取り外して再利用。
洋館に使われていたガイシ(絶縁用の部品)は、取り外して再利用。

日用美の家作り

文/小澤典代

手仕事まわりの取材・執筆とスタイリングを中心に仕事をする。ものと人の関係を通し、普通の当たり前の日々に喜びを見いだせるような企画を提案。著書に「韓国の美しいもの」「日本のかご」(共に新潮社)、「金継ぎのすすめ」(誠文堂新光社)「手仕事と工芸をめぐる 大人の沖縄」(技術評論社)などがある。
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