大人女子会のたしなみ【第19回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

ryomiyagi

2020/03/13

一見和やかな女子会でのバトルに戦慄

 

ちょっと前にカフェで仕事していたら、隣の席の女子3人が恋愛トークしていました。

 

1人の女子(柏木由紀似)が、彼について悩みを相談しているようでした。

 

「この前も女とフレンチ行ってたみたいで、ちっちゃい嘘つくんです」

 

それを聞いた年上っぽい女子が

 

「まず、恋愛で大事にしたいことはなにか決めないと。それで人を選ばないと。あたしは思ったこと言い合える人がいいな。そこからブレなかったら彼と出会ったし」

 

と上から目線でアドバイスすると、ゆきりん似の女子が煽られたと思ったのか

 

「私も1ヶ月毎週ちがう男の人とごはん行ったんです。自分が主導権にぎってて好きにさせる方法って。だいたいわかるじゃないですか」

 

と、自分の方が恋愛スキルが上であるとマウンティング。

 

それに対し年上女子は

 

「わかる、私もそういう時期あった」

 

とさらに対抗し、ゆきりん似の女子は

 

「前の彼のときも私からシャットダウンして……」

 

と自分に絶対的な主導権があることを主張していました。

 

一見和やかな女子会の中でのバトルに戦慄を覚えつつ、恋愛トークで盛り上がれることに憧れを抱きました。そして、若いな……という感想も。

 

老眼…浮気…男クソ…夫早く死んで…

 

女子会の話題は年代ごとに移り変わっていきます。20代は恋愛トーク、時々仕事の話。

 

30代はなぜか人脈トークが多かったです。マスコミやPRなど華やかな仕事の女子が、誰と仕事して誰と仲良いとか延々と人脈をアピールしていた記憶が……。

 

そして40代の女子会となると、リア充アピールが多かった20代30代とは内容が変化し、もっとディーブになる傾向があります。

 

例えば、2年くらい前に行われた4人の同年代の女子会で、話題のキーワードだけメモしていたのですが、それがかなり殺伐としていました。

 

「老眼 近く見えなくなる 白髪 見えない 年をとったら拡大鏡買え マンションのいじめ 浮気されまくる 女性の手紙が出てくる 男なんかクソ 70代女性 早く夫に死んでほしい」

 

この時どうしてこんなダークな話題になったのか細かい部分は忘れたのですが、たぶん参加者の1人が男性に浮気されたとかで、男性は信じられないという話の流れになっていったのだと思います。お互い慰め合い、友情を確認した女子会でした。

 

人生の試練をアピール

 

大人の女子会は、ヤング女子会と違って、逆マウンティング状態というか、幸せより人生の試練をアピールしたくなる傾向に。

 

不運や試練を乗り越えた人はリスペクトされます。SNSで表面的な幸せを投稿している反動、という面もあるかもしれません。

 

例えば、ちょっと前に会った年上の女性からは、男性不信をきっかけに美容整形をしまくっていると告白されました。

 

二重など簡単な手術はチェーンの安い美容整形クリニックで、リフトアップなど難易度の高い手術は銀座とかの高いクリニックで行うと良い、などの豆知識を伝授してもらいました。

 

また最近、久しぶりに会った女友達との会合では、親の介護やお葬式、猫の病院通いといったそれぞれの苦労を語り合うことで、不思議な一体感が得られました。お互い大人になったからか、友人の噂や悪口といった話にはならず、そのかわりにイギリス王室と日本の皇室のご結婚問題について語り合いました。大人女子会で人気の話題のネタが王室・皇室トークです。自分とは全く関わりのない世界の話だからこそ気軽に取り上げられて、適度に盛り上がります。

 

意識高い系の女子会からスピ系の女子会まで

 

いっぽう大人の女子会はピースフルな空気ばかりでなく、緊張感が漂う会もあります。ある会に参加したら、業界歴の長い女性が皆に「パイセン」と呼ばれて立てられていました。

 

「パイセンの持ってきたお酒、すごいおいしいです!」
「パイセン、さすがです!」
「視点が違う!」

 

とあからさまにヨイショされていましたが、バイセンはメガネの奥から一同を見回し満足げでした。仕事で関わりがあるグループなので、力関係を保ちつつ、和を乱さないように気を使っている感じです。

 

私もつい同調して、その初対面の女性をホメたりしていましたが、高校時代に戻ったかのような女子グループの空気が久しぶりでちょっと新鮮でした。

 

好きだった海外ドラマ「ゴシップガール」を思い出しました。女子会に1人ボス的な存在がいると、話題がその人中心になりがちです。たまにはこんな女子会も空気が引き締まって良い刺激になります。プレイだと思えば楽しい時間に。

 

意識が高すぎる女子会も緊張します。仕事で活躍している美女二人との会食で、お酒が入るに連れて1人の女友達が格言を連発。

 

「何を教えられるかより何を学び取るか。転んだ先に何かある」
「その人にしか持ちえない荷物がある。大きい荷物もてるからえらいわけじゃない。人はその時の状況しか見ない」

 

など、思わずメモ。以前から頭が良いと思っていましたが、酒の席で放たれる格言に脳が追いつかず、話題に置いてきぼりに……。

 

彼女はもう1人の美女と、意識が高い同士、意気投合し「素直さが良い」「人脈がすごい」と、お互いほめ合っていました。私のレベルが達していなかったのか、以来誘われていないです……。

 

個人的にそんなにアウェイと感じず、わりと居心地が良いのはスピリチュアル系のトークです。大人女子会の2割くらいはスピ系の話に落ち着く印象があります。

 

先日の女子会では、エジプトの遺跡や猫の癒しのパワー、宇宙などの話で盛り上がり、「猫は宇宙から人間を癒すためにやってきてくれた存在だと思う」と言ったら、賛同してもらえて嬉しかったです。

 

大人になって思うのは、20代30代の時は人としてかなり未熟だったので心の中で対抗心がせめぎあったりしていたのが、今はその時よりは寛大に、友人の幸せを喜び、不幸に思いを寄せられる、ということです。もうどんな女子会でも怖くありません。リスペクトがあればポジティブなひと時に……。

 

今月の教訓
大人の女子会では、SNSでは見せない人生の裏面を見せ合うことで友情が深まります

 

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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