IKEAで飲む
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

立川店のありがたみ

スウェーデン発祥で、洗練されたデザインの家具がとんでもない規模で並ぶ家具屋、兼雑貨屋、「IKEA」。2006年に船橋に1号店ができて以来、ポツポツと店舗が増え始め、何しろ見て回るだけでも楽しいので、年に2回くらいのペースで訪れています。
また、エントランス近くでは食品も販売されていて、イートインではなんと、80円でホットドッグが食べられたりする。100円出すと、好きなだけトッピングもマシマシにできる。僕はこれが大好きで、行くたびに、パンからこぼれ落ちんばかりにピクルスとフライドガーリックを乗せて食べていました。
が、それとは別に店内にあるレストランに関しては、意外とノーチェックだった。というのも、IKEAにいくと「あれも買っとこう。これも買っとこう」と、必然的に荷物が多くなるし、ちょっと遠出ということもあって、実家の車を借りて家族で行く、というパターンが多かったんですね。というかそれしかなかった。となると、運転をするからお酒が飲めない。お酒が飲めないと、レストランに寄ってもどこか虚しい。もちろん家族で行くので、寄ったことがないわけではなかったのですが、カレーかなんかを淡々と食べて食事終了、というようなことになる。いろとりどりの美味しそうな料理が並び、アルコール類も置いてあるIKEAのレストラン。いつかはここで飲んでみたいな。と、あこがれだけを抱いていました。

 

ところが最近、2014年にできた「IKEA立川」が、うちからけっこう行きやすいことに気がついた。我が家のある練馬区方面からだと、バスで吉祥寺に出てしまえば、そこからは中央線で1本。トータルで1時間もかからない。このルートで気軽に行ってみてもいいんじゃないか。そんなことを思いつき、また、ちょうど家の中や事務所に必要なものが細々あったので、初めて車ではなく、つまり、お酒を飲んでも大丈夫な状態でIKEAに行けたのが、つい先日のことなんです。

 

どこもかしこもキラッキラ!

この日はお互いに平日日中に時間をやりくりし、夫婦で訪れました。到着すると、ホットドックコーナーには目もくれず、まずはザーッと前半の展示ゾーンを流す。必要なものをポイポイと巨大カートに放りこんでゆく。ぜんぶ見ていくとけっこう時間がかかるし、若干疲れも出はじめます。そんな絶妙なところに、どーんと用意されているのが、IKEAのレストランなんですね。
カートを一時置き場に避難させ、中へ。お盆を取ってレーンに沿って流れていけば、棚にずらりと並ぶ一品料理ゾーンから、熱々を提供してくれる肉料理ゾーン、メインやパンやデザートゾーンと順に選んでいけるシステムになっていて、これが楽しすぎる! 前回来た時は薄くモヤがかかっていたようだったのに(言いすぎ)、今日は飲めるから、どこもかしこもキラッキラ! 大概が馴染みの薄い横文字メニューなんですが、なぜかそこに「かあちゃんの唐揚げ」ってのが混ざってるのを見つけ、思わずふきだしてしまう。どれもこれもリーズナブルなのもあって大いに迷いつつ、なんとか料理を選び終えました。
それから肝心のお酒。まぁワインかな、と思っていたんですが、なんとサーバーにグラスをセットして自分で注ぐ生ビールが、小サイズながら200円なんだという。これやりたい! と、ビールから始めることにしました。

 

知らない料理で飲む楽しさ

平日の昼間ということもあり、広い広いフロア内には、それなりに空席があります。大きな窓の外に広がる秋晴れの空を眺めながらぐいっとビールを一口。あぁ、なんて気持ちがいいんだ。と、目の前すれすれを多摩モノレールが走りすぎてゆく。その新鮮な光景に、今自分は遠くスウェーデンの地にいるんだと、思いこませることができなくもありません。いや、スウェーデンにモノレールが走っているかどうかはしらんけど。
そんな、いつもとは一味違うIKEAで、いよいよ本格的に飲み始めましょう。選んだのは、期間限定の「サーモンと雑穀のサラダ」、「スウェーデンミートボール 8個」、あとなんか、辛いソーセージ2本。これを夫婦でシェアしていただこうというわけです。
波型にカットされたピクルスや、カリフラワーや、なんだかよくわからない食材がごちゃごちゃと乗ったサーモンサラダの、自分の知らない料理感が楽しい。サーモンは、大きな切り身が4切れの上に、キャビアっぽいものまで乗っています。合わせてパクリ。まったりとしょっぱくて、うますぎる! ビールごくごく。
その下の雑穀やらなんやらをごそっとスプーンですくい、よくわからないピンク色のソースもつけてパクリ。モグモグモグ。何これ美味しぃ~! 主食にしたい! ビールごくごく。
ミートボールもみっしりと肉々しくてうまい。優しい味のマッシュポテトたっぷりなのも嬉しい。珍しいのが、お皿の上にジャムが添えてある点。これをミートボールにつけていただくのがスウェーデン流とのことで、新しい味覚の扉が開くかと試してみましたが、まだ僕には少し早かったみたいでした。
辛いソーセージが辛い! かなり辛い。けどうまい。ビールが進む! こりゃ、2杯目もビールだな。と、初めてのIKEA飲み、存分に堪能させてもらいました。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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