ryomiyagi
2020/01/29
ryomiyagi
2020/01/29
ある晴れた休日、「今日はお出かけ日和だ」と言って意気揚々とAさんが家族をつれてピクニックに出掛ける。
ところが、急に天気が崩れて土砂降りになり、「ほんとに今日はお出かけ日和ね」と家族に言われてしまう。
Aさんに対する非難のこもったこの発言がいわゆるアイロニー発話と呼ばれるものの典型とされる。
この場合、「アイロニー」に「皮肉」という訳語を当ててもかまわないが、アイロニーは「皮肉」よりも幅広いカテゴリーの修辞的表現である。
本書では、この「言いたいことの逆を言う」アイロニーがどうして相手に伝わるのかという問題を考える。
加えて現実を相対化するための、知的な「武器としてのアイロニー」の可能性も示す。
きはら よしひこ 1967年鳥取県生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科教授。専門は現代英語圏文学。 京都大学文学部卒業、同大学院文学研究科修士課程・博士後期課程修了。博士(文学)。 2019年、ウィリアム・ギャディス『JR』(国書刊行会)で第5回日本翻訳大賞受賞。 主な著書に、『UFOとポストモダン』(平凡社新書)、『ピンチョンの『逆光』を読む』(世界思想社)、『実験する小説たち』(彩流社)など。 主な訳書に、アリ・スミス『両方になる』、リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』(以上、新潮社)、ハリ・クンズル『民のいない神』、ベン・ラーナー『10: 04』(以上、白水社)、デイヴィッド・マークソン『これは小説ではない』(水声社)など。
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