akane
2019/02/08
akane
2019/02/08
プライベートでレストランを利用する時、気をつけたいのはお手洗いを先に済ませておくことです。料理の途中に「ちょっとトイレに」と言わなくてすむようにしておきましょう。
なぜなら私たちサービスマンは、シェフのつくる料理を最高のタイミングでお客様に提供したいからです。調理場でたった今完成した料理を、温かいものは温かく、冷たいものは冷たい状態でお客様に提供したいのに、「えっ? このタイミングでトイレなの?」と席を空ける人がいます。
もちろん生理現象だから仕方ないのですが、料理は時間がたてば当然劣化していきますから、結局はお客様が損をすることになりますし、私たちサービスマンも口惜しくて仕方ない。win‐winならぬlose‐loseの関係になってしまいます。
近頃は「インスタ映え」という言葉が流行っているせいか、料理の写真を撮られるお客様も増えました。店の宣伝にもなるのでありがたい一方、常に運ばれてきた料理の写真を撮ることは、料理を味わう観点からはマイナスです。
何度も言うように、料理は舌で味わうばかりではありません。
運ばれてきた料理の説明を私たちサービスマンがする。材料や調味料、調理方法やその歴史を少し解説することで、「頭でも味わう」。それが料理の醍醐味です。
ところが私たちの説明も聞かずに「きゃ~きれい! 可愛い~」とはしゃぎながらシャッターを押し続けていたら、私たちも一所懸命に解説したくなくなります。
また、私たちが解説している時は、料理ではなくサービスマンの目を見ていただきたいのです。サービスマンの表情や身振り手振りを見ていただけると、私たちも張り切ります。そうなるとお客様とのコミュニケーションも弾み、普段は話さないようなエピソードも思わず話してしまいます。そうすれば、舌と頭で二倍以上に美味しい料理となるでしょう。
そして最後にお願いしたいのは、若いスタッフを育てるのはお客様だと自覚していただくことです。入社したての若手サービスマンは、緊張しています。時には粗相もするでしょう。
そういう時にお客様からかけていただいた温かい一言、アドバイス、励ましの言葉はそのサービスマンの一生の宝になります。彼ら彼女たちがその店に長く勤め続ければ、お客様にとっても心許せるサービスマンに成長していくでしょう。
私たちから見て素晴らしいお客様とは、ただ料理やワインを楽しむのではなく、レストランという空間を、私たちサービスマンとの人間関係を、そのお店とかかわった過去や未来をも楽しんでいる方なのです。
時にはシェフを呼び出して、「今日の料理はこの味がこうだった」などと感想を言ってもいいと思います。時には苦言もあるでしょう。料理やサービスが素晴らしかったら、どうか照れずに「よかったよ」と言ってください。スタッフの何よりの励みになります。
そういうことが続けば、スタッフもお客様を覚えて顔馴染みになります。そうなれば「常連」として対応してくれますから、win‐winの関係ができます。
そんな関係から最高のサービスが生まれると、私は信じています。
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