akane
2018/08/02
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2018/08/02
砂糖の原料であるサトウキビは、南太平洋の島々が原産地とされています。それがインドを経由して、中国やヨーロッパ、アフリカ大陸に伝わっていきました。
世界中の様々な国でサトウキビが広がっていった理由は、他の食べ物では味わえない砂糖の甘さにあると考えられます。
18世紀後半、産業革命を迎えるころには砂糖の生産量が大幅に増加し、関税が大幅に引き下げられ、工場労働者も毎日の朝食などで砂糖を摂ることができるようになります。工場労働者たちは、1日の重労働に必要なエネルギーを砂糖から摂取するようになったのです。これ以降、砂糖は一般大衆の生活に深く入り込んでいくようになります。
日本では、16世紀後半以降、南蛮貿易や長崎貿易などを通じて多くの砂糖が輸入されるようになります。国内でも、九州・中国地方などでサトウキビの栽培が盛んになり、和三盆などに代表される国産の砂糖も流通するようになります。この結果、江戸時代の初めまでは味噌味や塩味だったお菓子の「あん」に砂糖が使われるようになるなど、砂糖は日本の食文化に浸透していくようになります。
現在では、「異性化糖」と呼ばれる甘味料が、砂糖に次いで広く使用されています。
異性化糖は、デンプンを分解してできたブドウ糖の半分程度を果糖に変化(異性化)させたものです。加工食品の原材料欄に、「果糖ブドウ糖液糖」(果糖の含有率が50%以上のもの)、または「ブドウ糖果糖液糖」(果糖の含有率が50%未満のもの)と表示されているものが異性化糖です。身近にある清涼飲料水など加工食品のパッケージを見ると、異性化糖がたくさん使われているのが分かるでしょう。
しかし現在、砂糖や異性化糖の摂り過ぎは世界中で問題になっていて、各国で摂取量を抑える努力が進められています。
世界保健機関(WHO)が2015年に発表した「成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン」では、肥満や虫歯の予防のために、砂糖などの糖類の摂取量は総摂取カロリーの5%までにしたほうが望ましいとされています。大人1日の総摂取カロリーを2000キロカロリーとすると、5%は100キロカロリーとなり、砂糖では25グラムに相当します。
この25グラムというのはとても少ない量で、例えば、一般的なコーラ飲料350ミリリットル缶には約40グラムの砂糖が含まれているため、1本で1日の推奨限度を軽くオーバーしてしまうことになります。一般的なスポーツドリンクでも、500ミリリットルのペットボトル1本に約30グラムの砂糖が含まれています。
農林水産省の「砂糖及び異性化糖の需給見通し」によると、私たち日本人は1日に平均42・5グラムの砂糖と17・7グラムの異性化糖を消費しています。つまり、世界保健機関の推奨値を大幅に上回る糖類を毎日摂取しているというわけです。このような、砂糖や異性化糖の摂取量が多い状態が50年以上にわたって続いています。
世界保健機関は砂糖や異性化糖の摂り過ぎを抑えるため、これらが入った飲料などに税金をかけることを推奨しています。
2011年にはフランス、2014年にはメキシコ、2017年にインドとタイ、2018年にはイギリスとフィリピンが導入するなど、世界的に「砂糖税」の導入が進められています。
このように、砂糖と異性化糖の過度な摂取が健康をおびやかすことは、世界中の常識になりつつあるのです。
※以上、基礎生物学研究所・新谷隆史氏の新刊『一度太ると、なぜ痩せにくい?』(光文社新書)をもとに構成した。
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