水素水すべてが悪いのか?老化を防ぐ「水素」研究こうして始まった
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『写真:アフロディーテ/アフロ』

 

最近は「水素水」がブームです。水素水のメーカーが雨後の筍のように現われ、新聞・雑誌には広告があふれていて、なかには新聞紙面いっぱいを使った巨大広告もあります。

 

でも読んでみると、「美容と健康に」とか「高齢化が進む中、生活習慣病対策に」とか、たいしたことは書いていない。人気女優が「私も飲んでます。なくてはならないものです」などと言っているけど、なぜなくてはならないものなのか、さっぱり分からない。

 

こんな宣伝に巨額の費用(新聞の全面広告は数千万円?)を投じても割が合う、よほど儲かる商売なのに違いない。これでは多くの人から疑いの目で見られても仕方がないことと思われます。

 

でも水素水の広告が要領を得ないのは、それが「薬」として認可されておらず効能を謳うことが許されていないという事情もあるので、全く根拠がないという訳ではないのです。

 

実は、このブームは大澤郁朗(東京都健康長寿医療センター)・太田成男(日本医科大学)らのグループの論文が引き金になっています。

 

彼らはラットに水素ガスを吸わせると悪玉活性酸素が除去されることを発見して、水素ガスの生理作用と医療応用の研究に新たな道筋をつけたのです。

 

実験を始めて間もなく、彼らは水素の効果の大きさにびっくりしました。そのときのことを、のちに太田は書いています。

 

「スタートしてすぐに、私たちは衝撃を受けました。最初の実験で腰を抜かすような驚きの結果がでたのです。実験を始めて3日目のこと、一緒に研究していたスタッフが思わず『すごい効果です!』と叫びました。水素を含む培養液の中では、細胞の中に活性酸素を発生させても細胞がダメージを受けなかったのです。これは革命的な発見でした……」

 

より詳しく調べると、水素は細胞内のあらゆる場所(核、細胞質、ミトコンドリアなど)に入ることができて、悪玉活性酸素であるヒドロキシルラジカルとペルオキシナイトライトだけを選択的に消去し、他の善玉活性酸素には作用しません。

 

これまでの抗酸化剤(ビタミンCなど)が細胞内には入ることができず、細胞外で善玉・悪玉の区別なく活性酸素を消してしまったのとは全く違います。これは水素が新しい抗酸化剤としてはたらく可能性を示した画期的な発見だったのです。

 

これを契機として水素分子が生体に及ぼす効果の研究が世界的な盛り上がりを見せるようになりました。活性酸素は脳神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、血液系、内分泌系から眼、鼻、歯、骨、皮膚に至る、ほとんどすべての器官や組織の病気に関わっており、水素はその多くの場合に有効に働くことが知られてきました。

 

人はみな老化します。生物としてのヒトの寿命は120歳と言われていますが、そこまで生きる人がほとんどいないのは老化が起こるためなのです。

 

老化の原因は、主に活性酸素による損傷が蓄積して身体の機能が衰えることです。すると水素水で活性酸素を減らせば老化が防止できるのではないかと期待したくなります。

 

実際、速く老化する血統のマウスに水素水を飲ませることで老化の進行が抑えられたという報告があります。水素水はもちろん「不老長寿」の薬ではあり得ませんが、ヒトの生物としての最長寿命120歳に近づくことができるように、老化を防ぐはたらきをしてくれるものと期待されるのです。

 

残念なことに水素分子の医療効果についての膨大な研究結果はほとんど知られておらず、医学の専門家の間でさえ水素分子の医療効果に懐疑的な人が少なくありません。

 

このような地道な研究の成果が水素水の誇大宣伝と混同されて正しく評価されないのはまことに残念なことです。これらははっきりと区別しなくてはならないのです。

 

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