ジャンパーズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 太田忠司
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 小説はどのようにして生まれてくるか、それは作家によって、作品によって様々だろう。僕の場合は、絵だ。イメージと言ってもいい。それが突然、脳裏に浮かぶ。いや、訪れる。

 

 今から二年前、通っているジムのランニングマシンでジョギングをしていたときのことだ。iPodで洋楽を聞いていたと思う。でもその音楽とはまったく関係のないイメージが、唐突に訪れた。数人の男たちが楽器を持って演奏している。みんな年寄りのようだ。でも楽しそうに曲を奏でていた。

 

 このひとたちは誰だ? 僕は走りながら彼らに面接を試み、いくつかの情報を得た。トレーニングを終えて帰宅した後、ツイッターに投稿した。以下のようなものだ。

 

「ジムでトレーニングしてる最中に『結成50年のグループサウンズバンド』というアイディアが降りてきて頭の中でキンキラの服を着た爺ちゃん達がジャカスカ楽器を鳴らし始めて止まらないのでどこかで書かせてくれませんか」

 

 幸い、僕のこのツイートにすぐ反応してくれる編集者がいた。彼らのことを書くことになった。

 

 でも、それからが大変だった。僕は楽器の演奏などしたことがない。バンドの話を書こうにも基礎知識が無さすぎる。だからプロの演奏家や関係者に話を聞き、音楽教室に通ってドラムにも挑戦した。ずいぶん苦労した。でも物語自体はほとんど悩むことなく書き続けることができた。キャラクターが次々と現れて、それぞれが活発に動いてくれたからだ。彼らが生きる世界はとても居心地がよく、ずっとここに留まっていたい、ずっと書いていたいとさえ思った。長い間作家をやっているが、これは得難い経験だった。

 

 そして、この『ミート・ザ・ジャンパーズ!』が完成した。長年親交のある喜国雅彦(きくにまさひこ)さんに素敵なカバーイラストを描いていただくだけでなく、喜国さんと国樹由香(くにきゆか)さんに素敵な推薦文まで頂戴した。この作品は果報者だ。

 

ミート・ザ・ジャンパーズ!
太田忠司/著

 

メジャーデビューはしていないが、結成50年、平均年齢70歳に届こうかというご長寿バンド、ジャンパーズ。彼らはなぜ、やめなかったのか? 夢をあきらめたことのある、すべての大人たちへ贈る、胸を熱くする音楽青春グラフィティ(延長戦)!

 

PROFILE
おおた・ただし 1981年、「帰郷」で星新一ショートショート・コンテスト優秀作。’90年、『僕の殺人』で単行本デビュー。近著は、『ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を』など。

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