akane
2019/03/18
akane
2019/03/18
「工作機械」という言葉を耳にして、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人はピンとこないのではないでしょうか。
それもそのはずです。その多くは工場で人工物を加工するために使われるものなので、日の当たるところにはほとんど出てこないからです。つまり、多くの人の目には触れることがあまりないという意味で、表舞台には出ない裏方産業なのです。
それだけではありません。工作機械産業は産業の規模としても大きくはありません。景気の波を大きく受けて変動しやすいものの、その市場規模は平均すると約1兆数千億円で推移しています。
つまり、工作機械産業は裏方産業であるだけでなく、産業の規模としてもそれほど大きくはないのです。
しかし、裏方であることや産業規模がそれほど大きくないことが、産業の重要度をそのまま決定づけるわけではありません。裏方がしっかりと支えて初めて、表の晴れ舞台は成立するからです。規模は単なる量を表しているに過ぎず、質を表現しているわけでもないのです。工作機械産業は、そうした指標では計れない戦略的な重要性を持っているのです。
それは何よりも、まず、それがなければ人工物を作ることができないという点にあります。工作機械は「機械を作る機械」であることから「マザーマシン」と呼ばれ、車、家電、スマホ、航空機等、あらゆる人工物を作るのに欠かせない機械なのです。
それどころか、私たちは工作機械がなければ、ワインやウイスキーすら飲むことができません。それらのキャップを覆っているラベルを「キャップシール」と呼ぶのですが、実は、これも、工作機械の一種である成形機で作られるからです。
それを知ると、少しは工作機械について親近感が増してくるのではないでしょうか。
ものづくり産業全体のイメージは、階層構造としてとらえるとわかりやすくなります。
階層構造の頂点には、自動車や家電、航空機等の最終完成品が位置します。その下の階層には、完成品を構成する様々な部品が位置します。車は約3万点の部品で構成され、航空機は約100万点の部品からなるといわれています。
これらの部品をうまく組み合わせて最終完成品は作られるのですが、これらの部品を作っているのが、工作機械なのです。その意味で工作機械産業は、階層構造の底辺近くに位置し、ものづくり全体を下から支えている基盤産業だと考えられます。
日本やドイツを見ればわかるように、強いものづくりの背後には、必ずといってよいほど強い工作機械産業が存在し、縁の下の力持ちとして支えているのです。(つづく)
※以上、『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』(柴田友厚著、光文社新書)から抜粋し、一部改変してお届けしました。
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