ゼロから起業するよりも事業承継(小さな会社の買収)が圧倒的に有利である3つの理由
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日本にある会社の99・7パーセントは中小企業である。その多くが抱えている問題が「後継者不在」。社長は高齢化しているものの引き受け手のいない会社が、日本には127万社も存在する。世はまさに「大廃業時代」を迎えています。
会社という、人脈やノウハウ、ブランドを持つ「資源」をリサイクルし、未来へ繋ぐ。自らも安定した収入を得て、一国一城の主として自由を手に入れる。個人が幸福なキャリアを追及することで勝手に社会課題の解決に繋がる「事業買収」を、「社長のおくりびと」の異名を持つ事業承継コンサルタントが伝授する光文社新書『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』が刊行されました。
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会社を引き継いで事業オーナーになっていただきたい。私がそう思う理由のひとつに、生存率の高さがあります。

 

インターネットでも見ることができる、「フランスの事業承継と事業承継支援策(国民生活金融公庫総合研究所 村上義昭)」という論文があります。

 

前提として、フランスでは、事業承継は新規開業と並んで開業の一形態と見なされているようです。みなさんが、誰かから会社を譲り受けて経営する場合は、この形態に当てはまります。

 

この論文では、事業承継と新規開業を比較し、承継後(開業後)の存続率は前者のほうが高いと述べられています。3年後の存続率では、事業承継の場合が、76・5パーセント、新規開業の場合が65・7パーセントと、事業承継のほうが10ポイント以上高い結果となっています。この理由を、私なりに考えてみました。

 

1)不確定要素が少ない

 

ゼロからの起業の場合、起業家はアイデアや志をたよりに、事業の実現のため未知の世界へ飛び込みます。本人には「自分には顧客やマーケットが見えているから大丈夫だ」とそれなりの確信はあるのでしょう。しかし、始めてみれば、予想外のことがたくさん起きるはずです。「こんなはずじゃなかった」と後悔することだってあるかもしれません。要は、起業とは不確定要素のオンパレードなのです。

 

一方の事業承継には、これまでの基盤があります。サービスや商品を供給する土台があって、顧客もいます。ビジネス的な言い方をすれば、ポジションを取れています。スポーツに例えるならば、これからスタメンを狙う新規起業に対し、スタメンに選ばれているところから始まる事業承継といったイメージでしょう。事業承継のほうがゼロから起業するよりも安定性がある。この事実は、改めて学術的な裏を取るまでもない、あたりまえの結論にも思えてきます。

 

2)過去のデータを使える

 

また、事業承継型の開業では、過去のデータを使えることも大きなアドバンテージになります。たとえばゼロから起業する際に、「立ち上げ半年で、月商300万円に達する」と計画を立てたとします。しかしそれは、ほとんど根拠のない皮算用に近いものではないでしょうか? さらに、事業の軍資金をすべて借金で賄う場合を思えば、もうそれは博打に近いレベルかもしれません。

 

ところが、事業承継には過去の数字があります。「去年の同月は500万円の売り上げだったから、今年も同じぐらいは見込めるだろう」という、かなり具体性のある予想が立てられます。

 

新参者が失敗しがちな、原価計算などに関するデータだってそろっています。

 

飲食店を始めた人が、おいしいものを提供することしか頭にないため、まったく利益を出せないレベルで材料費を使ってしまう。ミスの典型です。原価計算は他店との競争や自店の存続のための肝となる論点ですが、匙加減が難しく、やってみないとわからない面が多々あります。ところが、そんな秘密も会社を買えば、瞬く間に手に入ってしまいます。

 

元の数字があるので、改善の計画だって立てられます。「この部分の経費を削れるから前年より利益を20万円増やせる」「あそこに営業をかけて、売り上げを5パーセント増やそう」といったイメージです。

 

博打なのか、改善なのか。やってみないとわからない起業と、ベースを土台に改善していける事業承継では、比較する意味すらないほど計画の実現性に差があるように感じます。

 

3)イノベーションではなく「改善」で事足りる

 

しかも、小さな会社には、経営的な改善の余地が山ほど残されている場合ばかりです。稼げていない中小企業も多いという話を先ほどしました。それはけっして、経営努力をやり尽くしたうえでの結果ではありません。むしろ、漫然と経営し、改善を積み重ねることを怠ってきた結果である場合がほとんどです。経営的な仕組みがしっかりした大きな会社で仕事に従事してきた方ならば、改善点はいくらでも見つけられることでしょう。

 

世の中が成熟すればするほど、大儲けできるようなチャンスは減っていくはずです。おいしい余白やギャップは少なくなると表現できます。もう今の日本には、そんなにたくさんの金脈は残っていないのでしょう。新規の起業を成功させるのは難しくなって当然です。

 

でも事業承継の場合、すでにポジションがあるのだから、後は上手く経営するだけです。たしかに爆発的に儲かることは少ないかもしれません。しかし、手堅く、長く稼がせてもらうことならば十分できるはずです。

 

もしかしたら、あなたが買おうとしている会社は、縮小傾向のマーケットに属しているかもしれません。それでも、成長が止まった市場に新規参入してくるライバルなんてめったにいません。むしろ退出していくほうが多いくらいでしょう。実は、これから成長が見込まれるマーケットよりも経営はしやすく、利益的にはおいしかったりもするのです。

 
経営に関わろうとする人が安定ばかりを追いかけるのも、筋が違う気はします。しかし、事業を承継するかたちの起業には、スタート時から安定性があるのは事実です。みなさんにはできるだけ勝てる勝負をしていただきたいと願います。

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奥村聡(おくむらさとし)

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