akane
2019/06/18
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2019/06/18
骨粗しょう症は、高血糖やインスリン抵抗性と関連している。
1型糖尿病の患者では、同性同年齢の健常者とZスコア(骨粗しょう症の診断には用いられないが、同年齢の平均骨密度を0として比較を表すもの)という指標で比較したところ、腰椎で(-0.22)、大腿骨で(-0.37)と低下していた。
その骨密度の低下から予測される大腿骨近位部骨折リスクは1・42倍であるのに対して、実際の骨折リスクは予想よりもかなり高く、6・94倍であった。
逆に、2型糖尿病の患者のZスコアは、腰椎で(+0.41)、大腿骨で(+0.27)と上昇しており、骨密度から予測される大腿骨近位部骨折リスクは0・77倍に低下するはずであったが、実際には1・38倍に上昇していたのである。
(Kanazawa,I. and Sugimoto,T. The mechanism of bone fragility in diabetes mellitus. Glycative Stress Research. 2017,4 (4): 267-274.)
糖尿病では骨の質が低下する。骨粗しょう症は、骨密度だけを重視しても仕方がない。骨密度は保たれていても、骨強度は低下する。骨質が悪く、強度が低下すれば、骨折するのである。それは、AGEs(終末糖化産物)によるコラーゲンの劣化が起きるからと考えられる。
またインスリンやIGF‐1(インスリン様成長因子1)は、骨芽細胞の分化やコラーゲン産生に重要な役割を担っていると考えられている。インスリン抵抗性やIGF‐1抵抗性で、インスリンやIGF‐1が作用不足を起こすと、骨形成が低下するのである。
膝などの関節軟骨のコラーゲンは非常に長寿命であり、高度なAGEsの蓄積を受けやすい。実際に、皮膚などのコラーゲンに富む他の組織と比較しても、関節軟骨は、比較的多量のAGEsを認めている。
軟骨コラーゲンの半減期は100年以上であり、皮膚のコラーゲンの半減期が約15年であることを考えても、AGEsの影響は非常に大きい。
(Verzijl,N. et al. Effect of Collagen Turnover on the Accumulation of Advanced Glycation End Products. J Biol Chem. 2000,Dec 15;275(50):39027-31.)
変形性関節症は肥満の人に多く発症するため、肥満による体重増加、つまり重力で関節が損傷すると考える人もいる。確かに肥満は増悪因子ではあるが、肥満とAGEsの増加の共通性を考えれば、変形性関節症は糖質過剰症候群の一つの病態であることが理解できる。
また、変形性関節症は体重のかかる下肢だけに発生するものではなく、体重のかからない上肢にも発生することを考えると、肥満による体重増加だけが原因ではないことがわかる。
さらに、高血糖は炎症を促進するが、関節の組織にもインスリン受容体は存在し、インスリンが炎症を抑制していると考えられている。しかし、関節の局所性のインスリン抵抗性は炎症を促進してしまう。
(Griffin,TM. and Huffman,KM. Insulin Resistance: Releasing the Brakes on Synovial Inflammation and Osteoarthritis? Arthritis Rheumatol. 2016,Jun; 68(6): 1330-1333.)
関節軟骨と同様に、椎間板の変性にもAGEsが深く関わり、単なる原因のわからない慢性腰痛だけでなく、椎間板変性症、椎間板ヘルニアも発症すると考えられる。
腰椎椎間板ヘルニアで手術を受けた患者は、他の理由で手術した患者と比較して、糖尿病の発生率が統計的に有意に増加しているという報告や、糖尿病があると椎間板ヘルニアの再発率も高いという報告もある。
(Sivan,SS. et al. Age-related accumulation of pentosidine in aggrecan and collagen from normal and degenerate human intervertebral discs. Biochem J. 2006,Oct 1; 399(Pt 1): 29-35.)
(Sakellaridis,N. The influence of diabetes mellitus on lumbar intervertebral disk herniation. Surg Neurol. 2006,Aug;66(2):152-4.)
(Mobbs,RJ. et al. Lumbar discectomy and the diabetic patient: incidence and outcome. J Clin Neurosci. 2001,Jan;8(1):10-3.)
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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