akane
2019/05/29
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2019/05/29
血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌される。
つまり、糖質を摂取することでインスリンが分泌されるのであるが、インスリンを分泌させる栄養素は他にもある。それはタンパク質だ。
正常な人であれば、タンパク質摂取でのインスリン分泌は、糖質に比べれば非常に少ない。
そして同時に、血糖値を上昇させるグルカゴンというホルモンも分泌され、インスリンとグルカゴンでほぼプラスマイナスゼロになるので、タンパク質は血糖値に通常影響を与えない。
実は本来のインスリンの働きは、この「タンパク質摂取時」のためにあるのではないかと考えている。アミノ酸を取り込んだり、タンパク質から筋肉などを合成する際にインスリンが必要だからである。
他の動物では血糖値にインスリン分泌が反応しない動物もいるくらいである。
このように、タンパク質摂取でのインスリン分泌や、通常の血糖値安定化に対するインスリン分泌は、体に必要な作用である。
インスリンは血糖値を低下させる働きだけが注目されているが、後ほど述べるように、その他の役割も非常に多いと考えられている。
そして、インスリンは、「基礎分泌」といって、常に少量分泌され続けてもいる。様々な組織や臓器は、インスリンが作用しないと十分機能しないばかりか、細胞が死に至る場合もある。
このように、インスリンは非常に重要なホルモンなのである。
進化の過程を考えると、そもそも人類は、糖質摂取量も少なく血糖値の変動も少なかったので、インスリンの役割は、現在のように血糖値を下げたり、脂肪を蓄積したりする作用がメインではなく、その他の役割の方がメインだったと考えられる。
現在の糖質過剰摂取に伴うインスリン分泌量は、これまで人類が経験してきたものとは違う。大量のインスリンを分泌しないと血糖値を下げられないほどの糖質量を摂取しているのである。
このような大量のインスリンが血中に分泌された状態を、高インスリン血症という。
高インスリン血症もまた、活性酸素を生み出し、酸化ストレスを増大させる。
さらにインスリンは、弱いながらも細胞増殖や成長作用を持ち、また、インスリン様成長因子(IGF)という、インスリンに似た強い細胞増殖や成長作用を示す物質を増加させるので、大量にあると、必要以上に細胞が増殖したりする。
その一つが「がん」である。
つまり、インスリンはなくてはならないものであるが、ありすぎると非常に害になるものなのである。
人類の体は、このような過剰なインスリン分泌を想定して進化していないので、現在のところ、過剰なインスリンに適応できていない。
高インスリン血症は、空腹時の血糖値や、糖尿病の診断をするための経口ブドウ糖負荷試験(=OGTT、血糖値を正常に保つ能力や糖尿病の診断に用いられる検査。75gのブドウ糖水溶液を飲んだ後の一定時間ごとの血糖値を測定する)で異常が出る前から、実際には多くの人に認められている。
アメリカ人4000人以上のデータで、空腹時血糖値とOGTTの2時間値が正常範囲の人の、なんと約半数が、高インスリン血症を示しているのである。
高インスリン血症になっても全く自覚症状を感じないので、気付かないだけなのである。
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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