akane
2019/06/06
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2019/06/06
実は、意外にも、整形外科に関わる病気の多くは、糖質過剰症候群である。
それはなぜか? 骨、軟骨、筋肉、腱、椎間板など、整形外科で扱う組織、臓器は、ほとんどがコラーゲンが主な構成成分なのである。
このコラーゲンは、高血糖になると糖化してAGEsが蓄積し、硬く脆くなり、炎症を起こしやすくなる。
だから、痛みや損傷が起きやすくなり、機能障害に陥り、骨や筋肉や腱、椎間板などの病気を起こしてしまうのである。
「サルコペニア」は、加齢に伴って生じる筋肉量と筋力の低下であり、最近非常に問題になっている。筋肉の低下とともに身体機能の低下を起こし、転倒や骨折、そして寝たきりに至る可能性が高くなり、生活の質を著しく低下させてしまう。
その原因は多因子性だと考えられるが、マイオスタチン(ミオスタチン)というホルモンに重要な役割があると考えられている。
マイオスタチンはその作用が全て解明されたわけではないが、筋肉の増加を妨げるホルモンである。成長の過程で不適切に筋肉が増加しすぎるのを防いでいると考えられる。
高インスリン血症では、このマイオスタチンが増加する。さらに肥満や糖尿病では、筋肉の種類も変化し、遅筋よりも速筋の比率が増加する。速筋はマイオスタチンの分泌が多い。マイオスタチンが増加することと、インスリン抵抗性とIGF‐1抵抗性による筋肉合成の低下および分解促進が起きるので、糖質過剰摂取では筋肉が減少してしまうのである。
サルコペニアの他の因子である慢性炎症や酸化ストレスの増加も、高血糖、高インスリン血症で起きる。
(Tanaka,M. et al. Role of serum myostatin in the association between hyperinsulinemia and muscle atrophy in Japanese obese patients. Diabetes Res Clin Pract. 2018,Aug;142:195-202.)
もちろん、高齢者の中には、年をとってきたら粗食の方がよいと信じている人もいて、白米と野菜をメインにして、肉などのタンパク質の摂取量が非常に少ないことも、サルコペニアの大きな原因の一つである。
高齢者にとっては筋肉の維持が非常に重要な課題である。高齢者であってもタンパク質が欠かせない。筋肉はタンパク質からできているのだから。
慢性腰痛の多くは、原因がわからないと言われている。私は腰痛の多くの原因は、脊椎の周りの筋肉の筋肉量、質の低下だと考える。
高インスリン血症、インスリン抵抗性では、脊椎の周りの筋肉の一部が脂肪に変性してしまう。
(Komiya,H. et al. Effect of intramuscular fat difference on glucose and insulin reaction in oral glucose tolerance test. J Atheroscler Thromb. 2006,Jun;13(3):136-42.)
それにより、有効な筋肉量の減少と筋肉の質の低下が起こり、慢性の腰痛を引き起こしていると考えられる。先ほど述べたマイオスタチンも関連している可能性もある。脂肪に変性した後で元に戻すことは非常に大変である。
(Urrutia,J. et al. Lumbar paraspinal muscle fat infiltration is independently associated with sex, age, and inter-vertebral disc degeneration in symptomatic patients. Skeletal Radiol. 2018,Jul;47(7):955-961.)
(Kalichman,L. et al. The Association between Imaging Parameters of the Paraspinal Muscles, Spinal Degeneration, and Low Back Pain. Biomed Res Int. 2017,2017:2562957)
5件の研究、13万1431人のメタアナリシスでは、糖尿病がない人と比較して、糖尿病があると腰痛が35%以上起こりやすかった。糖尿病の治療を求める人においては、約2・7倍腰痛が起こりやすかった。
(Pozzobon,D. et al. Is there an association between diabetes and neck and back pain? A systematic review with meta-analyses. PLoS ONE. 2019,14(2): e0212030.)
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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