akane
2019/06/03
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2019/06/03
■STP+4P(Segmentation, Targeting, Positioning + Product, Price, Place, Promotion)
企業がマーケティング戦略を立案する際の手順として、世界中で定着している概念がSTP+4Pである。
まず市場を細分化(Segmentation)し、その中で自社がターゲットとする市場を定め(Targeting)、次に競合との違い(Positioning)を確認する。それらに基づいて、製品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、販売促進(Promotion)のマーケティング・ミックス(4P)を決定していく。この流れを、頭文字をとって、STP+4Pと呼んでいる。
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確かにSTP+4Pは、教科書的には正しい。しかし実際に企業では、このような手順を踏んで、マーケティング戦略を立てているだろうか。
現実には、企業がマーケティング戦略を立てる場合、製品(Product)がおおよそできあがってから、残りのSTP+3Pを考えることが多い。
できてしまった製品に関して、どのようなターゲットが買ってくれそうか。
今さらながら、競合製品、自社の既存製品とどこが違うか(どこが評価されそうか)を見える化し、そして、価格、チャネル、販売促進を決めていく。
古い事例ではあるが、ソニーがヘッドフォン・ステレオ「ウォークマン」を開発したのは、若いエンジニアが小型の録音機「プレスマン」を遊びで改造して、音楽を楽しんでいるのを見たトップが注目し、開発の号令をかけたのが始まりであった(1)。
試作品ができた後、「ウォークマン」という商標や、ヘッドフォンをしたモデルにローラースケートを履かせて原宿を走らせるなどのマーケティング・ミックスが決定したのである。
逆に言えば、ソニーの開発部門で、再生専用ヘッドフォン・ステレオのコンセプトが練られ、ターゲットを若者に設定し、商品が開発されてきたわけではないのである。
このようなプロセスでSTP+4Pが決まっていくことが多いので、製品は小手先の修正しかできないことが多い。
逆に、製品が見えない状態でポジショニングすることは、かなり難しい作業と言える。
注1 黒木靖夫(1987)『ウォークマン流企画術』筑摩書房
「競合相手のいない空間に新製品を位置づける作業」
競合する製品・事業と比べて、自社の製品・事業にどのような特長があるかを、通常2つの軸上に位置づけることを指す。
マーケティングにおいては、市場に製品を出す前に必ず行う作業でもあり、多くの場合、自社の製品・事業は、他社があまりいない象限に位置づけられる。
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しかし企業で使われたポジショニングの図を見ると、時々おかしな図が見られる。例えば、図表29を見てみよう。
図表29を見ると、第1象限と第3象限にしか製品が位置づけられていない。第1象限と第3象限のみ、あるいは第2象限と第4象限のみにしか製品が登場しないポジショニングは、2軸で位置づける価値のないポジショニングである。
なぜなら、一般に高機能な製品ほど高い値づけがされているはずであり(高機能な物を安く売ったら、企業は損してしまう)、実は、この2軸は独立した軸(相互に無関係)になっていない。
実際に公表された例として、図表30がある。
香味の良いコーヒーは、一般に価格は高い。
ポジショニングのためには、2つの軸は独立である必要がある。
第2に、図表31もおかしいところがある。
図表31は、過去よく見られたビールのポジショニングであるが、コクとキレは、はたして両極であろうか。
昔はコクを高めればキレは落ち、キレを高めればコクは落ちるというのがビール業界の“常識”であった。
しかし「コクもあるしキレもある」ビールが開発され、それ以来この図は使えなくなった。
すなわちポジショニングの軸の両端は、対極の概念でないとまずいのである。
第3に、図表32も二重の意味でおかしい。
図表30と違って、タテ軸とヨコ軸は独立の軸である。また図表31と違って、軸の両端は対極に近い。
しかし問題はヨコ軸にある。
男と女は両極であるから、良いかも知れないが、はたして原点(ゼロ)は何を指すのだろうか。男と女は連続量ではなく離散量(イチかゼロ)なので、ヨコ軸上の位置は、意味がないことになる。
すなわち、ポジショニングの軸は、連続量でなくてはならないのである
さらに言うと、図表32はポジショニングの図ではなく、セグメンテーション(市場細分化)の図になっている可能性がある。
自社の製品・サービスを位置づけているのではなく、この製品・サービスを買ってくれそうな顧客を位置づけている可能性があるのだ。
ポジショニングの図とセグメンテーションの図は、しばしば混同されがちである。
以上3つの原則、
(1)2軸は独立 (2)軸の両端は両極 (3)軸は連続量
は、ポジショニングをする時に、忘れてはならないポイントである。
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