akane
2019/06/03
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2019/06/03
『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書)を上梓した三井誠さんは、アメリカで「地球外知的生命」に関連した取材をした時、「アメリカという国は、多様で、不思議な国だ」とつくづく思ったそうです。地球外知的生命とは、地球以外の宇宙のどこかにいるとみられる、私たちのような文明を持つ生命のことを指します。もちろん、その存在はまだ確認されていません。ちなみに「未確認飛行物体(UFO)」は、「彼らが地球にやってくる時の乗りもの」ということになっています。
アメリカには、UFOをテーマにした博物館があります。
それは、砂漠が広がる南西部ニューメキシコ州の小さな街ロズウェルにある「国際UFO博物館」です。
この博物館では、1947年に起きた「ロズウェル事件」を紹介しています。
<ロズウェル近郊で1947年に見つかった物体はUFOの残骸で、軍部が宇宙人の死体を回収しながらも隠している>
これが、ロズウェル事件の概要とされています。
事件から70周年となった2017年、私は国際UFO博物館を訪れました。
博物館は、この説を支持する当時の関係者の証言や、証言に基づいて作ったという宇宙人の人形などが展示されていました。(写真を参照)また、世界各地のUFO目撃情報も数多く紹介されていました。
目撃証言をもとに作られたという宇宙人の人形を展示している国際UFO博物館(2017年7月、ニューメキシコ州ロズウェル)
国際UFO博物館は1992年にオープンしました。
その後、アメリカ空軍は1994年、ロズウェル事件について「UFOの残骸とされたのは、空軍が実験で使っていた気球などの破片だ。この実験は、旧ソ連の核実験を監視するために極秘で行われた」とする報告書を出し、UFO説を公式に否定しました。
しかし、UFO人気は続きます。
人口約5万人のロズウェルの街で、国際UFO博物館は年間約20万人が訪れる人気スポットになっています。2015年の民間の世論調査では、アメリカ人の56%がUFOの存在を信じていて、45%は地球外生命はすでに地球に来ていると答えています。
国際UFO博物館のジム・ヒル事務局長はUFO人気の背景を次のように説明します。
「アメリカ人はもともと政府への不信感が強い。だから、いくら政府がUFOの存在を否定しても、UFO人気は衰えない。事件の情報を伝えるのが我々の役目だ」
私は、博物館に来ていた人に話を聞いてみました。
UFOを強く信じる西海岸ワシントン州の男性は「自分もUFOを見たことがある。ロズウェル事件は本当に起きたことだ」と話し、半信半疑の東部ペンシルベニア州の女性は「宇宙人が来ているとしたら面白いと思うし、もっと調べたいと思ってきた」と話していました。
「興味を引いて金儲けを狙っているだけ」という冷めた意見を述べる10代後半の青年もいたものの、熱心に展示を見て回る人は多くいました。
ロズウェルの街には宇宙人の顔をかたどった街灯があって、宇宙人を描いたTシャツやマグカップなどを売る土産物店も並んでいました。(写真を参照)
ロズウェルの街全体が、宇宙人のテーマパークのようでした。
※本稿は、三井誠『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書)の内容の一部を再編集したものです。
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