akane
2019/06/13
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2019/06/13
果物は健康の象徴である。しかし、現代の果物は品種改良が行われ過ぎて、昔の果実とは全く別物になってしまった。
人類が狩猟採集生活をしていたころは、夏の終わりや雨季の終わりから果実が多く実り、それを食べて体脂肪を増やし、食料の少ない冬に備えていた。食べるものが少ない期間を生き延びるために、特別な代謝を身につけた。果糖の代謝である。
しかし、現代の果物に含まれる果糖は、野生の本来の果実に含まれている果糖の量と比較して、非常に大量になってしまっている。
果糖は代謝の面で、ブドウ糖とは大きく異なると考えられている。果物に豊富に含まれる果糖は、他の糖質とは違い、インスリンとはほぼ独立した形で体内に取り込まれる。
腸で吸収された後は速やかに肝臓に運ばれ、そしてほぼ全てが肝臓で代謝され、ブドウ糖やグリコーゲン、中性脂肪に変換される。
血糖値の上昇や、インスリン分泌が少ないので、間違って「健康的な食べ物だ」と思う人がいるのも無理はないが、果糖はブドウ糖よりも危険な内臓脂肪を増加させる。
また、血糖値の上昇が少ないことやインスリン分泌を刺激しない分、脳に送られる食欲に関する信号(満腹だという信号)が減少してしまう。
狩猟採集生活で得られたような糖質の少ない果実であれば、こうした問題は起こらず、効率よく体脂肪を溜めることができた。
しかし、現在のように大量の果糖が体内に入ってくることは、進化の過程では予想されておらず、体は今でもそれに全く適応できていない。
今、流通している果物では、含まれている果糖の量と、食物繊維やビタミンなどの他の栄養素のバランスが著しく偏ってしまい、吸収の面や代謝の面でも問題を起こす。
現代では、美味しさは「甘さ」で評価されることが多いため、果物はどんどん甘くなっている。甘いということは、そこに含まれる糖質量が増加していることに他ならない。祖先が食べていた果実は、ニンジンほどの甘さだったと考えられている。
果物に多く含まれている猛毒の果糖を、健康的といってよいのかは、非常に疑問である。果糖はAGEs(終末糖化産物……タンパク質が糖化してできる物質。酸化ストレスを増大させたり、炎症反応を起こす)を非常に増加させやすい。
もちろん、果物はビタミンや食物繊維を含んでいるので、全く不健康な食材ではないが、少量にとどめておくべきである。
果糖は「酔っぱらわないアルコール」だと考えられる。果糖とアルコールは、人間の体内での代謝、その有害性や、体に起きる変化などがそっくりなのである。
果糖は人間の体の中で解糖されるが、アルコールは酵母があらかじめ解糖してくれているだけの違いである。
少量のアルコールは、多くの研究で、健康に対しての有益性が認められている。しかし量が増えるにつれ、その有害性が表れる。
果糖とアルコールの類似性を考えれば、果糖も量が増加するにつれ、有害性が表れるのは当然である。
現在、健康的なアルコール量として、1日20g程度が推奨されている。もちろん大人の話である。WHOが現在推奨している糖類の摂取量は、1日25gまでである。
現在果糖の比率が増加していることも考え、健康を維持するのに最大の果糖の摂取量を1日15gまでと考えると、アルコールと合わせて35g程度が上限である。
子どもは、その年齢などにより異なるが、小中学生では大人の50~70%程度を目安とするとすれば、もちろんアルコールは飲まないので、果糖として17~24g程度が上限と考えられる。あくまで上限であり、ここまで摂る必要もない。
果糖たっぷりのフルーツジュースを子どもにたくさん飲ませているのは、大人にお酒を何杯も飲ませていることと何ら違いはない。ご主人のお酒の量は気になるのに、子どもの糖質たっぷりのジュースは気にならない母親も多いのではないか。
「果糖ぶどう糖液糖」などの異性化糖を含んでいない100%のフルーツジュースには、多いもので1リットル当たり70gを超える果糖を含んでいるものもある。小さな子どもがこれを200mlも飲んでしまえば、相当な量の果糖が一気に体内に流れ込むことになる。
果糖は、フルーツジュースを含めて、果物そのもの以外から摂ることは危険だと考える。さらに、果物そのものの果糖の量も劇的に増加したことを考えると、果物そのものの摂取量も控えめにした方がよい。
現代の食品には、実に多くの糖質が含まれている。その中で最も多い糖質が果糖なのである。原材料名の表示があるものでは、果糖は「果糖ぶどう糖液糖」などの名前で含まれている。
生の食材を買わずに、調理した状態のものを買ったり、外食をしたりすると、そこにどれほどの果糖が含まれているのかわからない。注意をしていないとすぐに上限を簡単に突破する。極端に言えば、我々は知らないうちに「毒」を盛られているようなものなのである。
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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