ryomiyagi
2020/02/19
ryomiyagi
2020/02/19
かつては「キレる若者層」、今や「怒れるシニア層」「急増する隣人被害」などと、身近にいる当たり前の生活人が感情のコントロールを無くし、居合わせた他人に対して極めて不快な行動をとってしまうといったニュースはあとを絶たない。
子どもや孫もいるであろう、引退する以前はそれなりのポジションに就いていたはずのシニアが、道往く人を口汚い言葉でののしったり、見ず知らずの人に突然殴りかかったりと、そこに至るには様々な原因が有るに違いないが、それにしても昨今そんな話をよく耳にする。
目覚ましく情報化された現代社会にあって、メンタルのバランシングはますます難しくなる一方だ。
上司にこっぴどく叱責されて、憂鬱な気分に陥っているとき。
友人や知人からの何気ない一言に、深く心を傷付けられたとき。
失恋をしたり、大切な人を何らかの理由で失ってしまったとき。
誰しもそんな、思い出すだけで嫌な気持ちになる体験や記憶があるでしょう。
通勤時の満員電車ひとつ取っても、イライラしたりストレスを溜め込んだりする行動が日課になっていると、そのうち心身に大きなトラブルを起こしかねません。
イライラとは、インプットされた情報や体験に対して納得できず、感情をコントロールできないから発生するもの。
感情を司っているのはあくまでも脳です。ビジョントレーニングによって脳の使い方を改善することができれば、制御力が高まり、感情のコントロールも上手になります。
今から10年前。著者は自らを被験者として、脳画像診断の権威である加藤俊徳先生に、眼球運動をしている時の脳の血流を測定している。
物を眼で追う「追従性眼球運動」を行っているときは、従来の眼球運動の司令塔といわれている部分の活動が見られたのですが、離れている物を視点をジャンプさせながら見る「跳躍性眼球運動」を行っているときには前頭葉のはるかに広範囲にわたり、血流の上昇活動が起こりました。
そして「副そう性眼球運動」、つまり「寄り眼」をしているときは、前頭葉の前のほうの部分(前頭前野)の、集中力や意志的な活動を司る部分が働いたのです。
ビジョントレーニングによって、イメージしたり、集中力や感情をコントロールしたり、意思決定するなどの前頭葉の働きも促進されるということが、脳の血流を調べることで実証された。しかもたった1分間で。
そしてそれは、脳波の変化を測定することによっても明らかになっている。
人間の脳波は、大きくα波、θ波、β波の3つの状態に分けることができます。
「α波」とは、人が最もリラックスした状態で出る脳波です。
「θ波」は、さらにリラックスした状態。
「β波」は人が緊張したりイライラして活動しているときに出るものです。
最初の1分間は特に何もせず、眼を閉じて測定を行いました。このときはβ波がほとんどを占めていました(円グラフ(1))。次の1分間では眼を軽く動かしながら、測定しました。
この間はα波とθ波のバランスが非常によく、心の落ち着いた、理想的なメンタルコンディションであるといえます(円グラフ(3))。
つまり眼球運動を始めてすぐに、脳はリラックスした状態を手に入れたことになる。
ビジョントレーニングとは、ほんの1分間の眼球運動だけでストレス性脳波の状態を著しく改善する、驚異のメンタルトレーニングなのだ。
文/森健次
モデル/青木梨沙
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