akane
2018/02/06
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2018/02/06
マインドフルネスはもともと、禅の思想に影響を受けたアメリカ・マサチューセッツ大学のジョン・カバット=ジン博士が創った瞑想法である。博士は禅の「思想としての部分」と、「瞑想のテクニック」の部分を分けて、そのテクニックの部分を「マインドフルネス・ストレス低減法」として体系化した。
このプログラムは、現在は心理療法だけでなく、痛みの低減法や、ストレスを抱える患者の治療などに、幅広く応用されている。
近年では、ビジネスの分野でも注目されている。グーグルやゴールドマン・サックスなどの企業では、仕事のパフォーマンスの向上や、人間関係の改善に効果があるとして、用いられている。
マインドフルネスをすると、まず脳の使い方が変わっていく。そしてその結果、脳の構造自体が変化してくる。経験によって脳自体が変化する特徴を「可塑性」という。脳は、よく使っている部位は大きくなり、逆にあまり使わない部位は小さくなっていく。
マイケル・マーゼニックのサルを用いた実験を紹介しよう。
実験では、6週間、毎日100分ずつ、サルにヘッドホンで音を聞かせると同時に、装置を使って指をタップした。
この時、サルを2つのグループに分けた。
一方のグループのサルは、指に感じるリズムが変化した時に、ジュースを与えて、指の感覚に意識を向けるようにさせた。このグループのサルは、必然的に、音には意識を向けなくなり、指の感覚に意識を向けるようになる。
もう一方のグループのサルには、音が変わった時にジュースを与えて、指のリズムではなく、音に意識を向けさせた。
さて、6週間後に、両グループのサルの脳の状態を計測し比較してみた。
実験のポイントはこうだ。すべてのサルに与えられた物理的刺激は、ヘッドホンから流れる音も、タップする刺激も、まったく同じだった。唯一の違いは、ジュースを与えるタイミング(指に感じるリズムが変化した時か、音が変化した時か)の違い、つまり注意を向ける対象の違いということになる。
結果は、指タップの変化によってジュースをもらったサルは、触覚を感じる体性感覚野が拡大し、音の変化によってジュースをもらったサルは、聴覚野が拡大したのだ。
これと同様に、注意のコントロールを重要視するマインドフルネスによっても、脳にさまざまな変化が起こる。
たとえば、多くの人がしてしまっていることだが、過去の嫌な出来事に注意を向けてばかりいると、当然、脳のその部位(扁桃体や視床下部)の活動が活発になり、神経の配列も密になってくる。するとますます、そうした出来事が意識にのぼってきやすくなる。
そうではなく、「今、ここ」で起こっていることに注意を向けるように訓練することで、それに関係する脳部位の活動が高まり、やがてその部位の神経の配列が密になっていく。その結果、「今、ここ」での出来事に注意が向きやすくなる。
脳の神経は、生きている限り発達し続けていく。マインドフルネスをおこなうことで、集中力が増したり、ポジティブな感情をより多く持つ時間が増えたり、さらには脳の老化を遅らせられることも、実証されてきたのである。
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