アフリカが教えてくれた、世界共通のバリアフリー  車椅子トラベラー、アフリカをゆく(9)
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ryomiyagi

2020/06/08

著書『No Rain,No Rainbow 一度死んだ僕の、車いす世界一周』で、270日間単独車椅子世界一周旅行を記した車椅子トラベラー・三代達也さん。世界一周に続ける形で、2019年秋、念願のアフリカ旅行を達成しました。エジプト、ジンバブエ、南アフリカ共和国と旅を続けて、車椅子アフリカ旅行記最終回。三代さんが今回の旅から学んだこととは。

 

No rain,No rainbow

 

僕は、旅をしながら一生学んでいく

 

世界一周を完全に終えてから、事故に遭った13年前まで振り返る。
僕の車椅子人生初の冒険は、静岡から東京駅まで新幹線に乗って帰ることだった。
今思えばそんな簡単こと、と思うが、当時は本当に怖かった。

 

それから、一人暮らしを始めるという冒険、1人で海外旅行をしてみるという冒険、海外で1人で暮らしてみるという冒険をした。

 

そして世界一周、アフリカ縦断。
冒険のスケールはどんどん大きくなっていくのに、恐怖の度合いは皆等しい。

 

僕は昔、挑戦や変化から逃げてきたタイプだった。
だって、どうしてわざわざ人と違うことをして、うまくいくか確証もないのに挑戦しなければいけないのだろう、変化しなければいけないのだろう。

 

でも、一つ一つの冒険を振り返っていくと、おのずとその答えが出てきた。
あまりにも当たり前のことだが、初心に戻ってあえて記しておきたい。

 

一度挑戦して経験したことは、次に同じことをする機会には、グッとハードルが下がる。
さらに一歩上の挑戦をクリアすると、その前にした挑戦は嘘のように楽になる。
結局挑戦をするということは、変化をするということは、人生を豊かにすることなのだ、と。

 

だからこそ僕は、これからも先の読めない挑戦をどんどんしていきたい。
でも、それをする一歩目が、やはり一番大変。

 

そして僕には、一歩目を踏み出すために背中を押してくれた師匠がいた。
僕も誰かの一歩目の背中を押すことができる、そんな存在になりたい。

 

カイロ空港にて

 

そしてもう一つ、このアフリカ旅行で確信したことがある。
拙著『一度死んだ僕の、車椅子世界一周』の最後に、「世界共通のバリアフリーは人だ」と記した。

 

正直アフリカに行くまでは、「世界共通」と言っていいものか、少し悩んだ時もあった。
でも、どんな状況にあっても、人がいれば大丈夫。
アフリカ旅を終えて、改めてそう思った。

 

そして出会った人とのエピソードこそが、最も心に残る。
最も響く。

 

アフリカ縦断では素晴らしい景色や、遺跡や、動物たちもたくさん見てきた。
でも一番大切な思い出は、エジプトのホテルでのムスタファとの出会いだ。

 

ちょっとした手伝いならまだしも、自分に何の利益もなく、大変な思いをしてまで、人のことを助けようとするだろうか? 僕も見習いたい。

 

正直、アフリカ縦断を終えたからこそ得られたものはそんなにないと感じた。
旅は、何かを得るためにするものではない。
余計な感情や考えがどんどん剥ぎ取られて、よりシンプルに、より素直になるために、自分自身と向き合うために旅に出るのだと思った。

 

おそらく、僕が世界一周に行く前に抱いた、
「どんな人にも旅を楽しんでもらいたい」
という思いは、旅に出る人に景色や出会いを楽しむだけでなく、自分に素直に向き合ってほしいと言う思いなのかもしれない。

 

どんな生き方でもいい。
自分のやりたいことに嘘をつかず、貫き通す。
一昔前の日本には、そんな生き方をしたいと言ったら、不思議とたたかれる風潮があった。
でも、世界中で出会った人たちの多くは、自分をしっかり持っていた。

 

どんな生き方でもいい。
そう彼らが教えてくれた。

 

明日も楽しく生きていこう。

 

H.I.Sケニアの皆さんと
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一度死んだ僕の、車いす世界一周

一度死んだ僕の、車いす世界一周No Rain,No Rainbow

三代達也(みよ・たつや)

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