大崎梢 発刊記念エッセイ『花と女の子と殺人事件』
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ryomiyagi

2020/06/11

書店に勤めていたので、仕事内容をミステリ仕立てにしていくつか短編を書いたところ、声をかけてくれる出版社(東京創元社)があり、『配達あかずきん』という本になりました。長年夢見ていたデビューが叶い、まさに天にも昇る気持ちだったのですが、書店以外の業種を書く自信はなく、お仕事小説の依頼があったらどうしようと戦々恐々でした。

 

そんな中、東京創元社以外で初めて会ったのが光文社。にえきらない態度を取るよりは、きちんとお断りした方が誠意があるのではと私なりに腹をくくっていると、目の前に現れた編集者は『配達あかずきん』のようなものとは言わず、「何が書きたいですか」と、いわゆるド直球を投げてきました。

 

やってみたいことはあったのです。市井に生きるごくふつうの主人公が思いがけない出来事に遭遇し、抜き差しならない状況に追い込まれ、絶体絶命のピンチの中、誰も知り得なかった真相にたどり着く、そんな話を書いてみたい。「いいじゃないですか」とうなずかれ、後に引けない思いで挑戦し、なんとか出来上がったのが『片耳うさぎ』です。

 

気がすんだかと言えばそうではなく、この「やってみたいこと」は私自身の創作意欲と直結しているらしく、またしても思う存分やらせてもらい、『さよなら願いごと』という本になります。

 

第一章は『片耳うさぎ』と同じく、小学生の女の子が主人公。第二章は中学生の女の子、第三章は高校生の女の子と、花をモチーフにおまじないや占いを絡めて話は繋がります。こう書くと可愛らしいのですが、このリレーのバトンとなるのは殺人事件。順繰りに渡されていって、第四章ですべてが明らかになります。

 

女の子が主人公というのもこだわっている点で、世間から甘く見られがちな存在が、力を込めて放つ矢。それが硬直した現実を切り開くところを、見てみたいじゃないですか。

 

『さよなら願いごと』
大崎梢 / 著

 

【あらすじ】
「知ってる? ここで女の子の遺体が見つかったの。殺されたのよ」夏休み。三人の少女を繋いだのは、町であったという殺人事件だった。置き去りにされた謎をめぐって、彼女たちに危険が迫る。意外なつながり、意外な真相。鮮やかに紡がれた長編ミステリ!

 

【PROFILE】
おおさき・こずえ
東京都出身。2006年、『配達あかずきん』でデビュー。近著に『本バスめぐりん。』『横濱エトランゼ』『ドアを開けたら』『彼方のゴールド』などがある。

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