BW_machida
2021/03/16
BW_machida
2021/03/16
本書の著者であるうなぎさんは、昭和に生まれ、平成、令和の三時代を、処女としてかけ抜けてきました。いわば、エリート処女。とは言え決して恋愛ごとに興味がなかったわけではなく、中学生時代のうなぎさんの枕元には、いつも少女漫画があったといいます。
少女漫画に影響されまくっていた私は、「いつか私のところにも、爽やかで紳士的で王子様のような男子か、見た目はどう見ても不良青年だけど根はまじめで好きな女子に対しては優しく情熱的な男子が突然現れて、またたく間に交際へ発展して、自然な流れで身も捧げ、私の下半身のほうにも彼から何かしらの手ほどきがあるだろう」と、謎の自信とビジョンを持っていました。
しかし、ほぼ帰宅部でブックオフやツタヤに通う平和な毎日の中に突然王子様が現れるなんてこともなく、大学生になっても恋人がいない日々が続きます。街で仲睦まじく手をつないで歩く男女を見ては心の中で舌打ち、「可愛いふりしてあの子、やることはやっているのか」と想像してため息をついたりとカップルをひがむことはあったものの、処女としてうまく世の中に馴染んでもいたそう。
女子会で繰り広げられるガールズトークにも、海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』を観ていたお陰でついていけました。「男ってベッドではこうだよね……」とか、「体の相性が……」のような高度な話題にも、ドラマの知識を総動員しつつ、およそ処女らしくない前のめりの姿勢で、適切な対応ができていたのです。多分。
そんなうなぎさんにもついに春がやってきます。21歳でのちに夫となる男性と交際を始め26歳で結婚。けれどもこの時点でうなぎさんは処女のままでした。彼の決勝ゴールがどうしてもうなぎさんに入らなかったのです。
何度夜の試合を重ねても、私のゴールネットは揺れないまま時は流れました。
そんなこんなで、時をかける処女は26歳で処女のまま結婚しました。
でも、深刻に悩んではいませんでした。いつかは処女卒業できるよね? とまだまだ悠長に余裕ぶっこいていました。
そうして順調に処女キャリアを重ねていく中、次第にうなぎさんの周囲で子どもを持つ人が増え始めます。うなぎさん自身も妊活を始めようかと考えたとき、うなぎさんは気づきます。「妊活しようにも、まだ処女だった!」と。そこからうなぎさんの迷走が始まるのでした。
例えばスーパー銭湯に行ったときのこと。
あるいは友人と話しているとき。
「処女」であることを次第に意識するようになります。
自分が「処女」であることに急に意識的になったうなぎさんは、その事実になんとか立ち向かおうとするものの、アラサーながら性の経験値はおませな中学生以下。ひたすら思春期脳を爆発させるばかりで……。
急に性に向き合うことになったアラサー処女。大人の階段を登ろうと迷走する果てにどこへたどり着くのか。『奥さまは処女』でうなぎさんの奮闘を見届けてください。
文/藤沢緑彩
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