BW_machida
2021/09/24
BW_machida
2021/09/24
突然ですが、僕の夢は「火星人になること」です。そう、あの、火星人。
もちろん足が8本生えたタコ型生物になる気はないのですが、僕は人類で初めて火星に住む「火星人」になりたいなと思っています。
僕は小学4年生のころ、祖父からプレゼントされた英国の物理学者スティーヴン・ホーキング博士の子ども向け冒険小説『宇宙への秘密の鍵』シリーズの中に載っていた火星の青い夕陽の写真を見て、心が震えました。小説によると、どうやら人類が地球以外にいちばん住めそうなのは火星らしい。僕は、人類で初めて火星の青い夕陽を見た人間になるんだ。そう幼心に決心した僕は、夢中で研究を始めました。タイトルは、「火星を住めるようにするには」。
火星のことを調べてみると、二酸化炭素が95%の空気に覆われているそう。そこで僕は人が住めるようにするために、二酸化炭素を集めて何とかしなくちゃ、と思うようになりました。
これが、僕の二酸化炭素との出会いです。
まずは火星の空気を再現するため、ペットボトルの中にドライアイス(二酸化炭素の固体)を入れました。そこに庭から引っこ抜いてきた雑草を入れて蓋をして、植物が火星のような環境でどのぐらい生きられるのか試してみたんです。植物は二酸化炭素を吸って酸素を吐く「光合成」もしますが、僕ら人間と同じように酸素を吸って二酸化炭素を吐く「呼吸」もするので、二酸化炭素しかない容器の中だったらさすがに枯れてしまうはず。
……そう思いましたが、結果は全然違いました。なんと、3日間くらいピンピン生きていたんです。
そのとき、「すごい!」と思いました。
でも、それが「植物ってすごい」って方向に行かず、「二酸化炭素ってすごい」って方向に行ってしまって、それからかれこれ11年間も二酸化炭素マニアを続けています。
もはや、恋です。僕は二酸化炭素に恋をしました。
それから中学2年生のときに初めて温暖化の専門書と出会って、温暖化はもう止まらないという衝撃の事実を目の当たりにします。詳しいことは本文でご説明しますが、もう間に合わないという現状と、それを解決するための最後の砦となる技術が紹介されていました。
「この技術なら自分にも作れる!」と思った僕は、今までの二酸化炭素の研究を活かして、火星に行くための研究と地球を守るための研究の両方を軸に据えて研究することになります。
そんな「二酸化炭素の魔法」に気づいた僕は、今までに誰でもボタンひとつで二酸化炭素が集められる世界初の“どこでもCO2回収”マシーン「ひやっしー」や、その他たくさんの発明、研究をしてきました。
僕は「二酸化炭素」と聞くと、もうゾクゾクして、ワクワクが止まりません。
二酸化炭素は悪いヤツ、人類の敵。
そんな今までの考えから、この本を読み終えたころには
「二酸化炭素って、すっごく良い子」
「無限の可能性の塊だわ〜」
「二酸化炭素、可愛い〜! ファンになりました」
と考える地球人の皆さんが増えることを願ってやみません。
ゆるっとふわっと前向きに、絶望的な状況に立たされたときほど底抜けに明るくポジティブに。どんな問題も楽しくパパッと解決してしまう、新しい地球人(火星人?)に皆さんがなるきっかけにこの本がなれたら幸いです。
最後に、僕の人生の全ての始まりである『宇宙への秘密の鍵』から、僕が化学者としてすごく大切にしている言葉をご紹介します。
I swear to use my scientific knowledge for the good of Humanity.
I promise never to harm any person in my search for enlightenment…
《中略》I shall be courageous and careful in my quest for greater knowledge about the mysteries that
surrounds us.
I shall not use scientific knowledge for my own personal gain or give it to those who seek to destroy the wonderful planet on which we live.
If I break this Oath, may the beauty and wonder of the Universe forever remain hidden from me.
――“George’s Secret Key to the Universe”
わたしは、科学の知識を人類のために使うことを誓います。わたしは、正しい知識を得ようとする時に、だれにも危害をくわえないことを約束します……《中略》
わたしは、まわりにある不思議なことについての知識を深めようとする時、勇気を持ち、注意をはらいます。わたしは、科学の知識を自分個人の利益のために使ったり、このすばらしい惑星を破壊しようとする者にあたえたりすることはしません。
もしこの誓いを破った時は、宇宙の美と驚異がわたしから永久にかくされてしまいますように
――『宇宙への秘密の鍵』
それでは早速、地球から火星までの冒険の旅へ出かけましょう。
この本を書いたのは…
村木風海(むらきかずみ)
2000年 神奈川県相模原市生まれ、山梨県出身。化学者、発明家、冒険家、社会起業家。一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長。東京大学工学部 化学生命工学科3年生。
小学4年生のころから地球温暖化を止めるための発明と人類の火星移住を実現させる研究を行っている。専門はCO2直接空気回収(DAC)、CO2からの燃料・化成品合成。
2017年 総務省異能vation 破壊的な挑戦部門 本採択。研究実績をもとに、2019年 東京大学工学部領域5 推薦入試合格・理科 I 類入学。2019年、世界を変える30歳未満の日本人30人としてForbes Japan 30 UNDER 30 2019 サイエンス部門受賞。2021年、ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター 特別研究員(サイエンスフェロー)、株式会社Happy Quality 科学技術顧問を兼任。さらに内閣府ムーンショットアンバサダーに就任。
夢は、「地球温暖化を止めて地球上の77億人全員を救い、火星移住も実現して人類で初の火星人になる」こと。国や大学に依存しない独立系研究機関として、CRRAの仲間とともに全力で研究を楽しんでいる。
特技:化学実験。趣味:化学実験。映画鑑賞やバドミントン、船や飛行機の操縦も好き。好きな食べ物:全部「ば」がつく。湯葉、そば、馬刺し!(笑)
【引用】
『George’s Secret Key to the Universe』Lucy&Stephen Hawking
Simon & Schuster Books for Young Readers; Reprint版 2009年
『宇宙への秘密の鍵』ルーシー&スティーヴン ホーキング 岩崎書店 2008年
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