BW_machida
2021/09/25
BW_machida
2021/09/25
これまで、「地球を守るための行動が火星開拓にも繋がっちゃう!」というワクワクする話をお伝えしてきました。
「地球温暖化」や「エコ」というと何だか「我慢しなければならない」とか、「もう絶望だ、どうしようもない」というネガティブなイメージがついて回りがち。けれど、実は温暖化を止める研究はそっくりそのまま火星移住実現のための技術なんだということを、少しでも感じていただけたらすごく嬉しいです。
この本ではスケールの大きな研究の話をしてきましたが、僕たちひとりひとりが今すぐ実行できることもたくさんあるんです。このコラムではクイズ形式で、これを読んだ次の瞬間から取り組めることをご紹介します。
レジ袋有料化に伴って、利用する人も多くなったエコバッグ。この本を読んでくださっている皆さんも、持っている人は多いのではないでしょうか?
エコバッグは繰り返し使えます。とっても丈夫です。なので、薄っぺらいレジ袋1枚を作るのと、エコバッグを1枚作るのでは、作るのにかかるエネルギーは当然エコバッグの方がかかるんです。つまり、エコバッグを作るにはレジ袋何枚か分のエネルギーがかかっていて、その分、二酸化炭素も多めに出ています。エコバッグを使って本当に「エコ」になるには、最低でも何回かのお買い物でレジ袋を断らなければならないわけです。
そこで問題です。
Q1. レジ袋を何回断れば、エコバッグは本当の「エコ」バッグになるでしょうか?
(1) 30回
(2) 60回
(3) 300回
(4) 600回
制限時間は15秒です。
チク、タク、チク、タク……(時計のつもりです。笑)。
答えは!
ドゥルルルルルル…ジャーン!!!(ドラムロールの音)
(4) 600回
でした! びっくりですよね。
つまり、毎日お買い物に行ったとしても最低2年間は同じエコバッグを使い続けないと、エコにはならないんです。
なので、エコバッグの無料配布なんて実は恐ろしい話で、「無料だ、やったー!」と思ってたくさんもらっていると、レジ袋を断り続けなくてはならない年月が2年、4年と加算されているということです。エコバッグを10個持っていたら20年。何ということでしょう……(怖)。
そこで、僕がオススメする方法は2つ。
ひとつは、エコバッグを2年以上使い続けること。もしくはエコバッグを使わず、元々持っている自分のカバンやリュックにそのまま商品を入れること。
そして2つめは、あえてレジ袋を買うことです。薄っぺらいレジ袋と言っても何回かは繰り返し使えます。そこで、同じレジ袋を3〜4回買い物で使い、最後はゴミ袋として使ってあげるんです。そうすることで、トータルで半分かそれ以上の二酸化炭素を削減することができます。
レジ袋を何回か買い物で使い回す。今日からできること、ひとつめでした!
さーて、お次はマイ箸のお話です。
エコバッグと同じくマイ箸も随分前から流行っていますが、これも意外なお話があります。
……と、言ってしまうと何だかもうお察しかもしれませんが、ここで問題です。
Q2. マイ箸と割り箸、どっちがエコでしょうか?
制限時間は30秒です。
チク、タク、チク、タク……。
答えは!
ドゥルルルルルル…ジャーン!!!
「状況によりけり」
完全に空気を読んで「割り箸」と答えた皆さん、ごめんなさい!(笑)
もしくはマイ箸と答えたあなた、こちらも不正解です。
実はマイ箸と割り箸では、状況によってエコな選択肢が変わってきます。
食べ終わったマイ箸を、水で洗うとき
エコなのは……「マイ箸」です! ですが……。
食べ終わったマイ箸を、お湯で洗うとき
エコなのは……実は「割り箸」なんです! 割り箸は使い捨てですが、マイ箸は洗う必要があります。この洗うのをお湯でやってしまうと、お湯を沸かすのにかなりのエネルギーがかかってしまうので、トータルで見ると割り箸の方がエコなことになります。割り箸が燃やされることを考えても、です。
食べ終わったマイ箸を、洗剤を使って洗うとき
こちらも……「割り箸」です! 洗剤を使った水は、浄水場でキレイにするのがすごく大変で、実はかなりエネルギーがかかってしまいます。なのでお湯の場合と同じ結果となりました。
こんなふうに、マイ箸と割り箸をとっても、使い方次第では割り箸の方がエコになる結果となってしまいます。なので、箸そのものではなく、全体的に見て「本当にエコなのかな?」と考えることが大切です。
では最後に車の問題です。僕たちの生活に欠かせない自動車。ガソリン車以外にも、電気自動車、水素自動車など多くの種類のものを見かけるようになりました。ここで問題です。
Q3.現在の日本では、どの自動車がいちばん二酸化炭素を出さず、エコでしょうか?
(1) ガソリン車
(2) 電気自動車
(3) 水素自動車
制限時間は20秒です。
チク、タク、チク、タク……。
答えは!
ドゥルルルルルル…ジャーン!!!
(1) ガソリン車です!
え、まさか!? そんな声が聞こえてきそうですが……。日本に限って言えば、電気自動車や水素自動車よりもガソリン車の方がエコなんです。悲しいですが……。
その理由をご説明しましょう。
まず、電気自動車。電気自動車そのものからは二酸化炭素は出ませんが、電気はどこから来るでしょうか? そうです、日本は火力発電が多いので、二酸化炭素をたくさん出して作った電気を使っています。さらに、車に搭載されているリチウムイオンバッテリーを作るのに物凄いエネルギーがかかり(特にリチウムを鉱山から採掘してくるのにかなりのエネルギーがかかります)、トータルで考えると車を買ってから廃車にするまで、何万km走ったとしても、ガソリン車よりも二酸化炭素を出してしまうと言われています。
では、水素自動車はどうでしょう?
これも車そのものからは二酸化炭素は出ないのですが、使う水素が問題なんです。水素って、水を電気分解して作っていると思いがちなのですが(確かにその方法もありますが)、今、日本で使っている水素のほとんどは、アメリカやカナダの油田で取れるものを分解して作る方法です。油田で取れるものを分解すると二酸化炭素と水素が出てきます。こうして二酸化炭素を空気中に漏らしながら作った水素を、さらにはるばる日本まで船で運んでくるんです。この船からも二酸化炭素がたくさん出ているので、トータルでみるとやっぱりガソリン車より二酸化炭素をたくさん出してしまっているわけです。
つまり、悲しいことに、日本では今、ガソリン車がいちばんマシということになります。
これを変えるためには、そもそもの発電を変えるしかありません。でも、2030年までに間に合うかどうかは怪しい。
そこで、すでにあるガソリン車(正確にいうとガソリンではなく、軽油で動くディーゼル車)のガソリンを、「空から作ったそらりん燃料」に置き換えることが、いちばんの温暖化解決になるんです。
いかがでしたでしょうか? 驚きの結果だったと思うのですが、この3つのクイズを通して僕が皆さんにお伝えしたい言葉がひとつだけあります。それは、
「ライフサイクルアセスメント」
という言葉です。これは元々、産業界で使われていた言葉なのですが、「ゆりかごから墓場まで」、つまり物が生まれてから捨てられてしまうまで、全てでかかるエネルギーや二酸化炭素を考えることが本当に地球を守ることになる、ということです。
エコバッグ、マイ箸、電気自動車。一見エコそうな言葉だけを鵜呑みにせず、鳥のような広い視点で見たときに、「本当に二酸化炭素、出してない?」と考えること。この考え方をするだけで、皆さんも今日から今すぐに地球を守り、火星を拓くことができます。
この本を書いたのは…
村木風海(むらきかずみ)
2000年 神奈川県相模原市生まれ、山梨県出身。化学者、発明家、冒険家、社会起業家。一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長。東京大学工学部 化学生命工学科3年生。
小学4年生のころから地球温暖化を止めるための発明と人類の火星移住を実現させる研究を行っている。専門はCO2直接空気回収(DAC)、CO2からの燃料・化成品合成。
2017年 総務省異能vation 破壊的な挑戦部門 本採択。研究実績をもとに、2019年 東京大学工学部領域5 推薦入試合格・理科 I 類入学。2019年、世界を変える30歳未満の日本人30人としてForbes Japan 30 UNDER 30 2019 サイエンス部門受賞。2021年、ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター 特別研究員(サイエンスフェロー)、株式会社Happy Quality 科学技術顧問を兼任。さらに内閣府ムーンショットアンバサダーに就任。
夢は、「地球温暖化を止めて地球上の77億人全員を救い、火星移住も実現して人類で初の火星人になる」こと。国や大学に依存しない独立系研究機関として、CRRAの仲間とともに全力で研究を楽しんでいる。
特技:化学実験。趣味:化学実験。映画鑑賞やバドミントン、船や飛行機の操縦も好き。好きな食べ物:全部「ば」がつく。湯葉、そば、馬刺し!(笑)
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