ryomiyagi
2021/12/29
ryomiyagi
2021/12/29
日常会話で話題に上った内容が「ところで」と、まったくべつの話に簡単にジャンプしてしまうことがある。その理由はもしかすると、知識の拡がりにあるかもしれない。ある知識は持っていてもその周辺の知識は持っていない、それでいて本人は十分に「知ってるつもり」でいるのだ。
知識が少なく孤立していると「知ってるつもり」になりやすく、知識が孤立しないで豊富にあるようだと「知ってるつもり」になりにくいと著者は指摘する。本書はそんな「知ってるつもり」の状況を打開し、問題発見力を身につけるための方法を解説した一冊。疑問を生み出しやすく、生きた知識にするためのメカニズムを教えてくれる。
科学的な発見から日常的な学習まで、私たちの知識の大部分は「知ってるつもり」の状態にある。日常生活は問題解決の連続で、人との待ち合わせがあれば交通機関を選び、所要時間を見積もり、果ては夕食の献立に至るまで次々と問題を解決していくことが求められる。そうなると日常的に使う知識は日々の課題を解決できる程度でよくなるから、特段の問題がないかぎり専門的な知識が必要になることはない。しかし著者は、こうした「知ってるつもり」の知識レベルに警鐘を鳴らす。なぜなら人は知っている知識のすぐそばでしか、きちんとした疑問や推測をもつことはできないからだ。
「『知らない』とか『わからない』といった事態は、所有している『知ってる』知識のすぐそばで起きるのです。『知ってる』知識を活用して『知らない』状態や『わからない』状態になるわけです。
そして、その外側には、『考えたことのない、わからないとも思ったことのない』世界が広がっているのです。」
それでは「わからない」状態はどうしたら作れるのだろうか。方法はいくつかある。たとえば手持ちの知識では埋められない隙間を意識したり、気になることを探索したり、ある知識とべつの知識を衝突させて矛盾を引き起こしたり。複数の知識を組み合わせて、予測を立てるのもいい。こうした方法で知識をシステム化することができれば、わからないことや疑問に思うことが増えるはずだ。
ただ対象を眺めているだけで問題を解決できる、なんて都合の良いことは起こり得ない。もし正しく知識を操作する方法を身につけることができれば、新しい見解を手に入れ、さらには自身の可能性を広げるきっかけになるかもしれない。
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