選挙戦の最後に支持者が移動した 『WHAT HAPPENED』#6ヒラリー・ロダム・クリントン
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2017年9月にアメリカで刊行されたヒラリー・クリントン前民主党大統領候補の最新自伝『WHAT HAPPENED』(邦題『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』高山祥子訳)はたちまちミリオンセラーとなりました。このタイトルが示すように、あの歴史に残る大統領選を事細かに振り返った内容です。今回、邦訳版の刊行に合わせ、520ページ及ぶ長大な内容からハイライトを紹介していきます。

 

 

選挙戦の最後に支持者が移動した

ヒラリー・ロダム・クリントン著『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』より

 

選挙戦の最後になってわたしからトランプと第三政党候補者へ、支持者の移動があったという考えを裏づける証拠がある。全国の期日前投票では、わたしへの支持は強かった。期日前投票は、わたしたちの予想とほぼ一致する結果が出た。だが終盤、そして選挙日当日に、事態は崩壊した。

 

リアルタイムでは、わたしの立場がどれほど脆いものかを実感するのは難しかった。先に述べたように、民主党の世論調査員ジョエル・ベネンソンの世論調査では、最終週に確実なリードをしていたのだ。わたしのデータ分析チームも、毎晩何千人もの調査を行なっていた。「激戦区での票差が縮まってきている」と、エラン・クリーゲルから一一月三日に報告があった。だが彼は、「全国的に主要な部分は最後の四夜で+3だった」と続けた。ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴェニア州で、三ポイント票差でリードしているというのだ。民主党上院議員選挙運動委員会も同様の見込みで、もっと楽観的なものもあった。

 

のちに出口調査で、選挙間際まで気持ちを決めかねていた有権者がトランプに傾いたことが分かった。期日前投票がまったく認められないペンシルヴェニア州では、浮動票は五四対三七でトランプに多く行った。七二パーセントが選挙日に投票をしたウィスコンシン州では、五九対三〇。選挙日に七三パーセントが投票をしたミシガン州では、五〇対三九だった。このパターンは中西部を超えて広がった。フロリダ州では、浮動票は五五対三八でトランプに行った。この浮動票の追加によって、これらの州がトランプのものになった。

 

普通、過去の投票履歴や人口統計などから、浮動票の動きはおおよそ読めるものだ。世論調査員に第三政党の候補者を考えていると話す人の大半は、最終的には古巣へ戻る。二〇一六年の選挙運動の終盤では、共和党に戻ると予想される有権者たちは、その通りにした。だがわたしの側では、それは起こらなかった。第三政党の候補者を考えていた民主党寄りの有権者たちの多くは、第三政党に入れた。そして最終的には民主党を選ぶと期待された浮動票のいくらかはトランプへ行くか、投票しなかった。

 

そこには、過去には共和党に入れたかもしれないが、トランプが好きではなくて、最後まで適当な代替案を探していた郊外の中道派も含まれていた。選挙日、その多くが、渋々ながらもトランプに投票した。大半が期日前投票をして、わたしがコロラド州とネヴァダ州を獲得することにつながったデンヴァーとラスヴェガスの郊外での結果と、ほとんど全員が選挙日に投票をしたフィラデルフィアの郊外の結果を比べてみれば、よく分かる。

 

ほとんど全てが一〇月二八日以前に行なわれたインタビューに基づく、ペンシルヴェニア州での〈フランクリン&マーシャル世論調査〉では、わたしがフィラデルフィア郊外の四つの郡で三六ポイントの票差でトランプを上回り、二八パーセントに対して六四パーセントとリードしていた。選挙日、わたしはトランプを破ったが、票差はたったの一三ポイントだった。最終週での郊外の支持の低下は、田舎の地域でのトランプの威力に太刀打ちできなかったことを意味し、そうした州では僅差で負けることになった。

 

労働者階級の白人女性も、終盤に大量に動いた。トランプは選挙運動中全般的にこのグループを先導してきたが、NBCとウォールストリート・ジャーナルの世論調査では、一〇月の討論会のあいだはわたしが四ポイント差にまで詰めた。だが最終週、トランプが二四ポイントも有利に立った。

 

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WHAT HAPPENED 何が起きたのか?

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ヒラリー・ロダム・クリントン /髙山祥子 訳

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