ryomiyagi
2023/01/05
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2023/01/05
健康のためには「体を温める」のが良い。そう信じている読者にとって、本書は常識を覆す一冊になるかもしれない。この本を読んでいると、これまで効果的と信じていたことが実は無意味だった、という場面に何度も出くわす。
たとえば、真冬ほど薄着でいたほうが体は温まるということ。「体は外から温めれば温めるほど、体温を一定に保つために深部体温を下げようとする」ためだ。細胞内のミトコンドリアは、体を冷やすことで動きを活性化させ、酸素と一緒に脂肪を燃焼させてエネルギーを生み出す。反対に体を温めるほどにその働きは減少していく。だから健康のためには寒さという刺激を与えることが必要なのだと著者は説く。昔から行われてきた冷水を浴びる水ごり、乾布摩擦、寒稽古にはミトコンドリアを活性化する効果があったらしい。
ダイエット目的のサウナや半身浴も、効果のほどは期待できそうにない。大量の汗をかくと痩せたような気持ちになるが、実際は体を温めてもミトコンドリアは働かない。「脂肪が燃焼するのは、ミトコンドリアモードになっているとき」だけなのである。
辛いものを食べると体温が上がると思いがちだが、これも疑わしい。トウガラシの辛さを感じているのはTRP(トリップ)チャネルと呼ばれる痛覚受容体だ。痛覚受容体は皮膚・粘膜にくまなく存在する。トウガラシを食べたときに舌が感じているのは辛さではなく痛みであり、それを脳は辛さや熱さと感じているにすぎない。ショウガ湯を飲んで体が温まったように感じるのは錯覚にすぎず、実際には体を温める効果はないという。
寒さ刺激を体に与えることは、自律神経失調症からくる冷え症の改善にもつながる。たとえば手足が冷たくて眠れないとき。ベッドに入る前に風呂場で足首と両手に水をかけ、乾いたタオルで乾布摩擦すると足が冷えなくなるそう。また、冬の寒い時期には出勤前に両手足首に水をかけると温まった状態で出かけられるという。
「体は外から温めれば温めるほど、老化し、不健康になっていくのです。反対に、寒さ刺激を体に与えると、ミトコンドリアが活性化して、心身ともに元気が出ます。ミトコンドリアを活性化すれば、細胞レベルから若返り、健康が増進され、エネルギッシュに活動できるのです。」
そう語る著者はかつて体重が80キロあり、不整脈と腰痛に苦しんだ経験がある。水シャワーを続けるなかでダイエットに成功したと語る。水シャワーは一日に一回、お風呂上りに冷水のシャワーを体にかけるという手軽なもの。是非一度、試してみてほしい。
『体を冷やせば健康になる』
南雲吉則/著
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