ユニクロ、ソフトバンク…経営者はなぜデザイナーに相談するのか
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今日、デザイナーやクリエイターが、経営者の相談相手として、デザインやクリエイティブの領域にとどまらず、広く経営全般に関するアドバイザーとして起用されるケースが増えています。

 

例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングでは、柳井正社長が大きな権力を持つトップとして経営を仕切りながら、アートの側面についてはクリエイティブディレクターのジョン・ジェイ氏やデザイナーの佐藤可士和氏を重用し、経営のクリエイティブ面について大きく権限委譲しています。

 

同様の構図は、無印良品ブランドを展開する良品計画にも見られます。無印良品の場合、プロダクトデザイナーの深澤直人氏が、代表取締役会長である金井政明氏から直接依頼を受けた外部のアドバイザーとして、デザインの選定やプロトタイプの評価に大きく関わっています。

 

また、ソフトバンクが旧ボーダフォンを買収し、携帯電話事業へ進出した際に外部からアドバイザーとなったのは、としまえんやカップヌードルの広告で知られるクリエイティブディレクターの大貫卓也氏でした。

 

経営者に外部からアドバイスする仕事と聞けば、一般的には経営コンサルタントをまず想起する人が多いと思います。しかし今日、多くの企業経営者は、コンサルタントではなく、デザイナーやクリエイターを相談相手に起用しています。

 

デザインと経営というと、その接点はロゴマークやプロダクトデザインといった領域にしかないように思われるかもしれません。

 

しかし、私は「デザイン」と「経営」には、本質的な共通点があると思っています。この本質的な共通点があるために、デザインやクリエイティブの世界で一流の仕事をしている人が、経営者に対して付加価値の高いアドバイスができるのです。

 

では両者に共通する「本質」とは何か?

 

一言で言えば「エッセンスをすくいとって、後は切り捨てる」ということです。そのエッセンスを視覚的に表現すればデザインになり、そのエッセンスを文章で表現すればコピーになり、そのエッセンスを経営の文脈で表現すればビジョンや戦略ということになります。

 

結果として出来上がる成果物の呼称は異なりますが、知的生産の過程で用いる思考の仕方はとてもよく似ているんですね。 この「本質の共通性」をちゃんと把握するためには、経営という営みの本質が「選択と捨象」であることを、しっかりと理解することが必要です。

 

よく「選択と集中」ということが言われますが、これは同語反復=トートロジーです。選択したものに集中するのは当たり前のことでわざわざ言うまでもない。大事なのは「選択と捨象」、つまり「選択」したら、後は「捨てる」ということです。

 

JAL再生において中心的役割を果たした経営共創基盤CEOの冨山和彦氏は、その名もズバリ『選択と捨象』という著書において、「強い会社」は「選択」が上手なのではなく、「捨象」つまり「捨てること」に長けているのだ、と指摘しています。

 

多くの人は、「優れた意思決定」というのは「優れた案を選択すること」だと考えています。しかし、実際にはむしろ逆です。

 

つまり、「優れた意思決定」の本質というのは、「選択すること」にあるのではなく「捨てること」、すなわち「一見すればどれも優れているように見えるたくさんの案を、まとめて思い切って捨てる」ことにこそあるのです。

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