akane
2018/10/23
akane
2018/10/23
私たちは地球の上に住んでいて、その環境に慣れ親しんでいる。
だが、それが世界のすべてではないことは、天上に広がる夜空を見れば少しは実感できる。
つまり、私たちはふだん忘れているものの、気が遠くなるほど広大な宇宙に囲まれて生活しているのだ。
宇宙は謎に満ちた存在である。では、それはいったい、どのような姿かたちをしているのだろうか。
地球からカメラを引いて宇宙をズームアウトしてみると、太陽系、星々の連なり、銀河系など次々と大きな構造が見えてくる。宇宙は階層的な構造をしていて、小さなものがより大きなものの一部になっている、ということを繰り返している。
この階層構造はどこまで続いているのだろうか。
まだ宇宙の構造がよく知られていなかったときには、どこまで大きく見ても無限に構造があるのではないかと考える人もいた。いわゆる「フラクタル宇宙」と呼ばれる考え方だ。人は先が見通せないものに出会うと、すぐに「無限」を持ち出す傾向にある。
だが、実際には、この階層構造には「限り」があり、どこまでも無限に大きな構造があるわけではなかった。そして、その最も大きな構造は、何十億光年にもおよぶ大きさで、「宇宙の大規模構造」と呼ばれている。少なくとも観測された範囲では、それ以上の大きな構造は見られず、大きなスケールで平均すれば大規模構造が宇宙全体に一様に広がっているように見える。
宇宙の大規模構造は、大きな構造を探す「旅の終着駅」とも言えるものだ。
そして、それがどのようになっていて、どのようにできてきたのかということは、宇宙そのものがどのようにできてきたのかということと大いに関係している。
宇宙自体の起源、性質はどのようなものなのか
高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の教授・松原隆彦さんの新刊『図解 宇宙のかたち』(光文社新書)では、多くの図版を用いて、この「宇宙の大規模構造」を詳しく解説している。
本書では、最初に、私たちの周りの宇宙がどのようになっているのかを解説し、宇宙の大きなスケール感を味わう。
その後、最も大きな構造がどのように発見されてきたのかを見る。
さらに、そうした大きな構造がどういう過程を経て作られたと考えられているのかを解説する。
そして、大規模構造の中に含まれている情報により、宇宙そのものがどのような側面を明らかにできるのか、具体的に解説している。
本書では、大規模構造の解析法についても突っ込んだ説明をしている。したがって、ちょっと背伸びをしたい読者にとっても知的好奇心がくすぐられる。
宇宙がどのようになっているのかという疑問を追求すると、宇宙自体の起源や性質がどのようなものなのかというところに行き当たる。
その研究の最前線の雰囲気も味わえる、読み応えのある一冊だ。
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