2018/06/04
佐伯ポインティ エロデューサー
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』 河出書房新社
花田菜々子/著
どうも、佐伯ポインティ(@boogie_go)です。
出会い系サイトやアプリを使って、他人と出会ったことは、ありますか?
僕は、24歳の春から夏にかけて、出会い系アプリの「Tinder」にハマりました。
「Tinder」は、近くにいるユーザーの顔写真とプロフィールが表示され、自分が「LIKE(すき)」「NOPE(ちがう)」か選択できて、お互いに相手をLIKEしたとき、マッチとなり、チャットが開始される出会い系アプリです。
朝起きると寝ぼけ眼でアプリを開き、表示された人を片っ端からLIKEしていました。
僕は、自分のコミカルな顔面とふざけたプロフィールをLIKEしてくれた人とは、全員とメッセージしてみたかったので、相手を選ぶことはせず、どんな人でもLIKEにしていたのです。(「チンパンジー♀と大失恋し、人間の女性が好きだと気付きました」みたいな冗談しか書いてないプロフィールでした。)
そうして、僕をLIKEしてくれた様々な相手と、メッセージのやりとりをしていました。
たまにメッセージを通して気があった人とご飯を食べたり、ごくたまにデートをしたりセックスしたり。
3ヶ月ほど続けて、9人ぐらいと出会いました。
ほぼ毎週、誰かと会っているような感じです。
彼氏とセックスレスになり彼氏公認で出会っている人、フィリピンから来たレディボーイの人、僕の親友の元カノ…なかなかパンチのある人たちとの出会いがありました。
その中で出会った人と付き合うことになり、今、10ヶ月くらい経ちました。
彼女ができてから、Tinderはスマホ画面から削除しました。「必要ないから」と思いました。その時は。
果たして彼女をつくりたい為だけに、「Tinder」を使っていたのかな、と考えると、そうでもないような気がする。
そんな言葉にできない感情を抱えていた時に、この本の連載に出会いました。
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
元ヴィレッジヴァンガードの店長である、花田菜々子さんによる実録エッセイ。
タイトル通り、出会い系サイトを通じて出会った人に合いそうな本をオススメしていく中で、花田さんの身に起きた出来事が面白くも真面目に描かれています。
夫と別居して宿無しの生活を続ける、という閉塞感のある状況にあった花田さんが、出会い系サイトで直面したちょっとした事件や災難を通して、変わっていく姿がたくましく素晴らしいのです。
中でも、花田さんが「思ってたより、世界っておもしろいぞ」と思い始めるところは僕の好きなシーンです。
しかしそれにしても。とりあえずセックスって言ってみるやつ。
とりあえず結婚してるけど俺は問題ないって言ってくるやつ。
とりあえず時間いっぱい手品とポエムの発表するやつ。
とりあえず年収5千万と突飛な嘘をつくやつ。
こんな人ばかりのサイトなのか。もうめちゃくちゃじゃないか。めちゃくちゃすぎるだろう。
そう思いながら、けれど、5千万とふたり、渋谷駅に向かって歩く雑踏はいつもより力強く輝いていた。
だって無機質で居心地が悪いとしか思ってなかった街は、少し扉を開けたらこんなにもおもしろマッドシティーだったのだ。
なんて自由なんだろう。やりたいようにやればいいんだ。こっちだってやってやるよ。
やりたいように好き勝手に本の紹介してやるよ。
この本を読んで、僕が出会い系アプリに求めていたのは、恋人でもセックスでもなく「ほんの少しのドキドキ」だったんだと思いました。
面白い人に会いたい、面白い話が聞きたい、面白い体験がしたい。それらに僕はドキドキします。
確かに出会った人が彼女になってくれましたが、全く男女の関係のない友達できましたし、仕事の関係になった人もいます。
人生を豊かにするのは「人、本、旅」だと、ライフネット生命CEOの出口さんが本に書かれていました。
地元や学校の友達、バイト先、職場。そこで出会える人の数は、どうしたって限界があります。
これまでは、そこから新しく人と出会おうと思ったら、場所は限られていました。
でも、スマホが普及した現代ではインターネットが、自分の所属も、今いる場所も関係なく、人を繋いでくれます。
出会い系サービスも使い方によっては、いまの自分の世界をちょっとだけ変えるスパイスになりうるのです。
友達でもセックスフレンドでも仕事仲間でも恋人でも、「ああ、最高の人だ!」と思える相手は、数人か数十人に一人はいるはずです。
確率的には、数十人と会えば気があう人に出会えるかもしれません。
ただ、この書籍で書かれていたように、「自分が登場する官能小説を書いてくる」ような“変な人”と出会うリスクもあります。
そんなリスクとドキドキのある道行きは、冒険にも似たものになるでしょう。
現代において、プチ冒険を生むかもしれない装置を使ってみようかな、と思わせてくれるのが、この『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』。冒険したい人にはとっておきの1冊です。
ー今月のつぶやきー
「彼女が撮ったポインティ。自重により逆上がりができないことが判明する前である。」
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』河出書房新社
花田菜々子/著