2020/11/06
藤代冥砂 写真家・作家
『高城式健康術55 医師が教えてくれない家庭の医学』光文社新書
高城剛/著
医師やマスメディアといった外部からの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の体と対話しながら、生活の質を高めること。それが唯一、どんな名医でもついていけないスピードで「食事と環境」が変わってしまった現代社会を生き抜く術なのである。この時代、あなたの主治医は、もう、あなたしか見当たらないのだから。
本書の終わりにあたって、著者はこう告げている。
自分の心身のことは自分で管理するというのは、特に新しくもないメッセージだが、本書では、著者が実体験と自腹と信頼できる友人からの情報から、現時点での最高と考えられる療法やサプリメントなどを余すとことなく伝えている。
驚くべきは、その情報量の大さである。健康オタクという人は、私の友人にも多くみられるけれど、これほどまでの知識と経験を得るには、相当の意識の高さと行動力、そして経済力がなくてはできないことが容易に想像がつく。つまりは一般人が望んでもできないことを身代わりとなってやってくれているとも受け取れる内容であり、医療従事者さえもが様々な理由から追求できないであろうことの報告とも取れる。
日頃から、「快適に生活する」ことに興味津々な私であるが、本書に紹介されていることの多くが、是非試してみたいことばかりで、アンダーラインを引きまくりながら、ぐいぐいと読み進めた。
何かを知ろうとすれば、現在地を正確に理解することが、どの分野でも大切な前提になると考えるが、本書で紹介されているものでは、スニップス検査がそれに相当する。
簡単に言えば、遺伝子検査であり、それだけだとなんとなく新鮮味もないのだが、これまでのぼんやりと全体像を見るような遺伝子検査と違って、スニップス検査は、医療用に特化されたもので、個人間の遺伝情報のわずかな違いを意味するスニップを調べることで、性格や体質の違いなどの個性の元となる遺伝子の違いまで精査できる。
その結果によって、ある人には玄米食が合っていないことや糖質制限は逆効果などの情報も得られたり、電磁波耐性が弱いことを知ることで、ハイブリッド車や5Gのスマホを避けることが出来たり、切れやすいのは、神経伝達物質の分解力がおかしいのが原因だとわかったり、つまりは精査によって知れたことによって、現実の日常生活での対処法へとアクセスしやすくなる。
私たちは、これまでの環境や生き方などの物語を、不調の原因と結びつけがちだが、そうではなくて、そもそも遺伝子に問題があると分かれば、捉え方によっては、自己肯定へともっていくこともできると思う。
なーんだ、オレのせいじゃなかったんだ、いや、遺伝子はオレそのものだから、そうなんだけど、どうにもならない部分がしでかしたことなんだから、半分他人の仕業だよな、と堂々と言い訳ができる。
スニップ検査がインフルエンザの予防注射くらいに一般化したら、将来こんな会話が電車でも聞こえてくるかもしれない。
「わたしは、ヒスタミンの分解が得意じゃないから、ベジタリアンにはなりたくてもなれないのよね」
「どうせ俺は天才か総合失調になるかの二択なタイプなんだよな。だってグルタミン系のトラブルがあるからさ」
ここでは、本書で紹介されている55の健康術のうち一章にあるスニップス検査のみについて触れたけれど、他にも興味深い章が尽きない。著者の費やした時間とお金を想像したら申し訳ないくらいの情報であるが、どれを選ぶかは、自分自身の主治医であるその人次第なのは言うまでもない。
『高城式健康術55 医師が教えてくれない家庭の医学』光文社新書
高城剛/著