本は耳で聴いた方が疲れない!?「聴覚」の可能性を学べる一冊

三砂慶明 「読書室」主宰

『超効率耳勉強法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
上田渉/著

 

最近疲れて本が読めないと友人に愚痴をこぼすと、
「目が疲れているんだったら耳で聴けばいいんじゃない」と教えてもらったのがオーディオブックでした。永遠に上達しないのではと恐れている英語の勉強にも役立つと聞き、早速、ヘッドフォンを買って、アプリで聞きはじめました。
聞き流すだけでいいという宣伝文句の英語教材は、本当に速すぎて今の私には理解できなかったので、まずはオーディオブックの創業者、上田渉さんの本を手にとって勉強してみることにしました。

 

『超効率耳勉強法』は、2009年に刊行された『脳が良くなる耳勉強法』を、著者が最新の研究成果をふまえて更新した改訂版です。著者が説いていることは一貫して同じです。すなわち、「視覚」ではなく、「聴覚」を使って勉強したら、人生が変わったという著者の発見です。

 

本書によればオーディオブックとは、書籍をナレーターが読み上げたコンテンツのことで、「聴く本」を指します。
アメリカで流行した「カセットブック」(本の朗読が吹き込まれたカセットテープ)を取り入れ、日本でも1980年代にはじまりますが、当時のウォークマンが重かったことや、価格が高かったこと、コンテンツが限られていたこともあって、日本では日の目を見ない時代が続きました。
しかし、スマートフォンのITデバイスの普及とともに潮目がかわり、「音声メディア」の一つとして2010年代になって徐々に広まりはじめました。

 

なぜ著者は、目で読む本ではなく、耳で聴く本を薦めるのか?
その理由の一つが脳の負荷です。
私たちは、考えるときにいつも「言葉」を使って思考します。
それゆえに私たちが通常、読書する場合は、

 

(1)文字を目で見る
(2)文字を頭の中で音声に変換する
(3)言語として理解する

 

というプロセスをたどります。
しかし、聴覚を使えば、(1)のプロセスをはぶくことができ、脳の負担を軽減することができるのだと著者はいいます。そして、最近の脳科学の研究でも、リスニングが脳の成長に有益な働きをもたらすということが証明されています。本を聴くのは疲れないという著者の指摘も重要です。
最近のトレンドである「倍速視聴」も可能で、本を読むのが苦手な人でも、心理的、肉体的負担が少なく本が読めるという研究には驚きました。本書では、聴覚を活用した具体的な勉強法とともに、オーディオブックの全体像が記されています。
仕事帰りに聞いているとイヤフォンをつけたまま寝落ちしてしまうことがあるのは本と一緒かもしれませんが、散歩をしたり、通勤電車で本が広げられなかったり、本をもたずに本とともにいられるのは、本を愛するひとへの新しい贈り物です。

 

『超効率耳勉強法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
上田渉/著

この記事を書いた人

三砂慶明

-misago-yoshiaki-

「読書室」主宰

1982年、兵庫県生まれ。本と人とをつなぐ「読書室」主宰。 大学卒業後、株式会社工作社などを経てカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社。梅田 蔦屋書店の立ち上げから参加。これまでの主な仕事に同書店での選書企画「読書の学校」やNHK文化センター京都教室の読書講座などがある。著書に読書エッセイ『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)がある。写真:濱崎崇

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