2018/07/24
でんすけのかいぬし イラストレーター
『怪談』光文社古典新訳文庫
ラフカディオ・ハーン 南條竹則/訳
はじめまして。『本屋でんすけ にゃわら版』というフリーペーパーをつくっております、でんすけのかいぬしと申します。
小さなころは活字が大嫌いで18歳までに読んだ本が児童書3冊!という(元)書店員としては珍獣的な過去の持ち主の私が、こんなところでレビューなんかしていいのかしら……と思いつつ、“絵日記”風にお送りします。
今回読んだのは光文社古典新訳文庫のラフカディオ・ハーン著『怪談』。
耳なし芳一・ろくろ首・雪女、誰もが知っている怪談がいっぱい!
……のはずが、ひとっっっつもあらすじを言える話がなくて自分で自分に驚いた。
耳なし芳一も子供のころに実写のテレビ番組で見たけれど、「耳だけお経を書くのを忘れてむしられる」という子供の私には印象に残りすぎる過激なシーンだけが詰まったダイジェスト版が頭に残っていて、誰に?どこで?そもそもなんでそうなった?というところがまったく残ってない。
それにハーンの怪談に出てくるろくろ首の首は伸びず、首だけが浮遊する。
しかも美人な女性かと思っていたら、オッサンである。(女性もいる)
え?
ろくろ首って首が伸びるんじゃなくて飛ぶんだ……と思って調べてみたら、抜けるタイプ(抜け首)と伸びるタイプがいるのだとか……。
妖怪に種類とかあったんだ……。
日本の古典なはずなのに地味に発見が多いこと。
私が好きだったのは、恥ずかしがる鬼がどこか邪悪なものになりきれてなくていい感じの『食人鬼』と、美しい風景が広がるような『蓬莱』
ちなみにこの本は、翻訳者の南條竹則さんのあとがきまで怪談になっていて最後まで楽しい。
***
最後に私もひとつ、新古書店で働いていたとき不思議な話をしよう。
当時スタッフ募集の広告を出していたので、女性から「求人を見たのですが……」という電話がかかってきた。
私が「店長が席を外しておりますのでお名前と電話番号をお教え……」というところまで言うと、「ぐァァァァァァァァァ!!」という男の叫び声がした。
「!? 大丈夫ですか!」と慌てて言うと「名前と電話番号ですね!〇〇です!」と何事もなかったかのように応えてくれたのでただの聞き間違いかと思い、メモをして電話を切った。
後日その女性が職場のスタッフとして入ってきたので、「実はあなたが電話してきたときに叫び声みたいなのが聞こえたんだけど、何か飼ってるの?」と聞いたら、そのスタッフの答えはこうだった。
「あぁ。ウチのとなり、お墓なんですよね」
『怪談』光文社古典新訳文庫
ラフカディオ・ハーン 南條竹則/訳