2018/07/31
今泉愛子 ライター
セクハラなどの性被害体験をSNSで発信する「#MeToo」運動は、日本でも何名かの有名男性がその対象となり、過去の行いが明るみに出ました。このときわたしが気になったのは、男性の罪の意識の低さと、それとは対照的に女性が罪の意識に苛まれてしまうというギャップです。
たいていの男性は、ひどいことをしたという自覚がなく、一方の女性は、自分にも落ち度があったのではないか、黙っていた方がいいのではないかと葛藤しているようでした。罪の意識を感じているのは、加害者よりもむしろ被害者です。
なぜこうなるのか。
男女の性差に起因しているのは間違いないでしょう。
この本を読んで気づいたのは、痴漢は、セクハラと似たような背景があるということです。
驚くことに、痴漢の行為者の多くは性欲を抑制しきれないヘンな人ではありません。職業は圧倒的に会社員が多く、既婚者、高学歴の人も多く含まれています。そしてほとんどの痴漢は、常習者です。
なぜ痴漢を続けることができるのか。
それを許す女性が多いからです。
痴漢冤罪が騒がれることもありますが、現実には、痴漢冤罪となるよりはるかに多い痴漢が存在します。彼らがその行為を続けるのは「これくらい許されるだろう」「通報されることはないだろう」という心理から。これは女性への「甘え」だと感じました。
自分は許されるはずだという甘え。セクハラと似ています。
多くの男性にとって、女性は「許す性」なのです。
筆者は、痴漢を「優越感を得る行為」と断定します。女性を支配しているような感覚が簡単に得られるのです。
なぜそこまでして優越感が欲しいのか。
多くの人は、自分に自信がなく、周囲の目を気にします。自分がダメな人間だとバレることが怖くてたまらない。自身の弱さと向き合ってそれを認めることができれば、新たな一歩が踏み出せるのですが、それよりも手っ取り早く優越感が得られる行為に及んでしまう。
これは多くのことに通じる心理で、女性同士のマウンティングだって、それで得られるのは「わたしの方がすごいんだから!」という優越感ではないでしょうか。原動力になるのは、自信のなさです。
わたしにとって「いい本」とは、自分の思考を広げてくれる本です。
これまでの知識や経験とどんどんつながっていくことが楽しい。
この本は、間違いなくそれに該当します。
わたしの場合は、「痴漢」が、#MeToo運動とつながり、マウンティングにもつながりました。その思考のなかで、感じたのは、自分と向き合うことの大切さです。
自信のなさは、誰もが抱えています。大切なのは、それを認めること。認めるだけでラクになります。
本を閉じるとき、わたし自身の内面も少しだけゆたかになった気がしました。
これもオススメ!
『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』講談社
東小雪/著
重い告白ですが、性虐待の実態がわかります。
『男が痴漢になる理由』 イースト・プレス
斉藤章佳/著