2018/07/26
山本左近 元F1ドライバー さわらびグループ CEO/DEO
『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』草思社文庫
矢野和男/著
幸せに関する本は書店にいくと、文字通り山のように積んであります。
幸せに生きるということは、誰もがそう生きたいと望んでいる状態でありますし、多くの人がいまの自分は幸せなのだとなかなか言い切れないからこそこれだけ多くの指南書、幸せになる○○の法則、○○と考えるとあなたは幸せになる、といった自己啓発本がたくさん売れるのだと思います。
幸せかそうでないのか、人によってそれぞれ幸せなときや思うこと、感じることは違います。ましてや生まれた境遇も違えば、育ってきた環境が違うので、好き嫌いも人それぞれ、セロリが食べれなかったり。
そんな幸せという個人に依存した価値観や感覚の「幸せである状態」を、データとサイエンスによって「見える化」に挑戦されたのが著者の矢野和男さんです。
矢野さんは、世界中でも珍しい、どうしたら幸せになれるかという手段の話ではなく、「どのような状態が幸せなのか。」を科学的にアプローチして、幸せの指標を作られた方です。
そういった取り組みが評価されて、ドバイにあるハピネス省からも要請があったと聞いています。余談ですが、2016年にドバイは政府の政策が国民の幸せにつながっているかどうかを測るためにハピネス省(Ministry of Hapiness)を立ち上げたそうです。機を改めて詳しく知りたいと思いましたし、それが政治の本来のあるべき一つの姿なのかもしれませんね。
さて、話はそれましたが、本の話に戻ります。データに基づいた本文は非常に納得させられることが多いのですが、その中で面白い事象があるのでご紹介します。
幸せな人の共通点は「ゆらぎ」なんだそうです。名刺型のウェアラブルセンサーの加速度センサーで人の動きを測定すると、幸せな人には共通する体の微振動が見つかったそうです。逆に不幸せな状態にある人たちは規則的な動きをしていたということです。
その微振動のゆらぎをマネすれば幸せになれるというわけではなく、ゆらぎによって今の自分の状態を把握する。そして大事なのは意志と行動とおっしゃっています。
このように私たちの生活はテクノロジーの進歩によって便利になりより自由になると同時に、益々自らの意思決定を求められるようになってきている時代になってきていると思います。
『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』草思社文庫
矢野和男/著