akane
2019/04/22
akane
2019/04/22
目を開くと、そこは病院の病室だった。
「あぁ、そうか」
信じられないけれど、死ななかったのか──。
最初に思ったのは、ただそれだけだった。呆然と思っただけだった。何の感情も湧き起こらなかった。
しばらくして、全身骨折で、肺が破裂し、背骨と左腕は複雑骨折していることが分かった。首やあばら骨も折れていた。2回、手術をし、背骨と左腕にチタンを入れた。
肺には、輸血の管が体を貫通して通っている。人工呼吸器が口に繋(つな)がっている。他にも、よく分からない電線が、体のあちこちに付いていた。
痛みでわめき、叫び続けた。
看護師さんに「うるさい!」「自分で自殺したんだから、自分のせいでしょ!」と怒鳴られた。それでも、「痛い、痛い」と叫び続けることしかできなかった。
いますぐにでも、きちんと死にたかった。死にたかったのに、なぜ生かされるのだろう……。
「死なせてくれ!」
病棟の窓から飛び降りようと考えたが、窓は開きそうもなかった。そもそも、体が動かなかったから、断念するしかなかった。
生きたくもないのに、生きるための手術を受け、痛みを味わうことになった。選択の余地は、もう、どこにもなかった。
ただ痛みに耐える。それだけだった。
*
以上、『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(モカ、高野真吾著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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