BW_machida
2021/12/16
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2021/12/16
せっせと花粉を運ぶので、「小さい働き者」と呼ばれるマルハナバチ。でも、マルハナバチがみんな、力を合わせて働くとはかぎらない。
サックリー・カッコウマルハナバチがお手本にするのは、働き者の親戚ではなく、ずるいカッコウ鳥。巣づくりなんていうめんどうなことはせず、だれかの巣を乗っとる。乗っとった巣には子守りがたくさんいるから、子育てもおしつける。たいへんなことはみんなひとにやらせて自分はのうのうとしているのが、サックリー・カッコウマルハナバチのやり方だ。
うまく巣を乗っとるコツを、サックリー・カッコウマルハナバチはみごとに身につけている。メスはまず、おあつらえ向きの巣を見つくろう。子守りがたくさんいそうな大きな巣がいいが、働きバチにうち負かされるおそれがあるので、大きすぎてもいけない。目をつけた巣をしっかり調べて、巣の匂いを体にうつしてから、こっそり忍びこむ。そしてたちまち、自分と瓜ふたつの女王バチを見つけだす。巣のみんなはいそがしく働いているから、少しくらいのちがいには、だれも気がつかない。メスは女王バチを殺すか負かすかすると、さっそく自分の卵を産みにかかる。子どもが生まれたあとは、疑うことを知らない働きバチが、みんなで育ててくれる。
サックリー・カッコウマルハナバチはたしかにちゃっかりしているが、きちんと花粉を運んでくれる。植物の受粉に食糧をたよっているわたしたちの世界では、花粉を運んでくれる昆虫は、1匹のこらず貴重な存在だ。たとえそれが、ずるいペテン師だとしても。
サックリー・カッコウマルハナバチ
学名:Bombus suckleyi
カテゴリー:深刻な危機-野生における絶滅のおそれが極度に高い
成熟個体数:不明生息
場所:カナダ、アメリカ合衆国
脅威:農薬、生息地の減少、気候変動、大気汚染によってハチの数は世界じゅうで大きく減少しており、巣を奪われるほうも打撃を受けている。乗っとる相手がいなくなれば、サックリー・カッコウマルハナバチも生きのびられない。
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