2018/09/04
佐伯ポインティ エロデューサー
『マイデリケートゾーン』小学館
かもめんたる・岩崎う大/著
AbemaTVで開催された「シモネタGP2018」。
ケンドーコバヤシ、笑福亭鶴光、関根勤、イジリー岡田など、シモネタに精通した芸人たちが審査を担当している番組だ、そこで、“元彼と今彼のテレフォンセックスのネタ”で見事優勝し、賞金100万円を獲得したお笑いコンビが、かもめんたるだ。
キングオブコントで優勝したことで、かもめんたるのことを知っている人は多いだろう。
彼らのネタには、“バグった人”がよく登場する。思考やセリフが完全にヤバい人のことだ。彼らが創る悪夢のような世界観とキャラクターは、癖になる人はハマって抜け出せなくなる。かくいう僕も、夜な夜なYoutubeのかもめんたるチャンネルを見ている。
そんなネタのような、バグった人たちが沢山登場する漫画がある。
「下ネタが大好き」と公言する、かもめんたるの岩崎う大が描いた『マイデリケートゾーン』だ。この漫画は、もはやバグった人たちのビュッフェだ。どんな登場人物がいるかというと…
・秘宝館で亀頭に似た亀の世話をする男子
・ゾンビ農場で臭いゾンビ達とセックスする男
・突然アナルが部屋に発生して挿入してしまう学生
・刺青が入った女の人のエロ本を捨てに行く中学生
・宇宙人のAV撮影隊と競うAV男優
などなど……こんなエロに取り憑かれた人たちの物語が、1冊の短編にギチギチに詰まっているのだ。登場人物のラインナップを見ると、おかしな世界観が多そうだが、『マイデリケートゾーン』は単なる奇抜な設定の漫画、ではない。特徴的なのは、狂気じみてるけどリアリティのあるセリフだ。
『マイデリケートゾーン』の中に、無人島で高級ラブドールに出会った男の短編がある。
本編を少しだけ掲載する許可をもらったので、セリフの最高な気持ち悪さに注目して読んでみて欲しい。
海で「静かにイッていい?」とラブドールに聞いているあたりとか、イクときに「オイ!船長!聞こえるか!」と恨みをぶつけてるあたりに込められた気持ち悪さのディテールは、岩崎う大にしか描けないセリフである。
だが、読んでると不思議な気持ちになってくる。
ああ、オナニーに熱中しすぎてる時って、自分もこういうこと考えてるな…と。
しかし、そういった気持ち悪い思考やセリフを生み出す部分は、世の中には出さない部分だ。僕もエロデューサーという仕事をしているが、オナニーでイク時に言う、よく分からなくなってる喘ぎ声を記事で書いたりしたことはまだない。
そんな「よく分からないセリフを言っちゃう」脳ミソの気持ち悪い部分は、もしかしたら皆共通のものなんじゃないか。みんな気持ち悪いんじゃないか。この漫画を読んでるとそう思えてくるのである。これは『マイデリケートゾーン』であり、 ユアデリケートゾーンなのだ。
完全にバキバキの奇作なので、万人にはオススメしない。
だが、さきほどの短編を読んでみて、少しでも心当たりがあった人は、こっそり読んで欲しい。人類共通の気持ち悪さに、真正面から向き合った傑作だと感じるだろう。
『マイデリケートゾーン』小学館
かもめんたる・岩崎う大/著