2018/10/22
北野唯我 ワンキャリア最高戦略責任者
『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』光文社新書
山口周/著
「やめろよ」
その一言を言うことは、いつだって勇気がいる。学校で起きるイジメ。友人が悪事に染めようとしているとき。僕らは「自分の真価」を問われる。自分の中に「正しくて正義感のあるAくん」と「もし自分に火の粉が降りかかってきたらどうしよう?と思う弱気のBさん」、二人が対峙するわけだ。
多くの人は普段は「あえて他人を傷つけてやろう」となんて思っていない。
それは単純に、人間が善意の生き物だからという、非現実的な甘い理由ではない。むしろ、合理的な理由からだ。
動物がエサを仲間とシェアするのは「エサを取れなかったときのための、リスクを分散し、生き残る可能性を高めるため」であるように、人間も「他人をあえて傷つけるような人は、他者からハブられ、生存確率が逆に下がる」ことがほとんだ。つまり「普段からあえて他人を傷つけてやろう」なんてと思う人は、そもそもこの社会で上まで上り詰められない。
でも、一方で、そうとは思えない事例もたくさんある。
テレビをつければ、日大アメフト部監督による事件、神戸市や横浜市の教育委員会によるいじめ調査結果の隠蔽……。今、劣化した「おっさん」による問題が次々とメディアで現れている。
でもこれは、本当は「おっさん」の問題ではなく、「普通の人間」の問題だ。言い換えれば、誰にでも冒してしまう可能性のある問題だ。だって、僕たちは小さい頃からクラスの中にいじめを前にして「やめろよ」と言えただろうか? その相手がどんな強そうな人間でも? 自分が組織の中ではぶられる可能性があったとしても?
きっと、必ずしもYESと言える人ばかりではないはずだ。それぐらい組織は人を駄目にすることがある。劣化させることがある。
ではどうすればいいのか?
この本には「劣化しないための処方箋」のヒントが溢れている。
特に好きなフレーズを取り上げるだけで、これだけある。
・日本に優秀な若者がいないのではなく、彼らを支えるサーバントリーダーがいない
・本当に停滞して社会の閉塞感の要因になっているのは「大きくて古い会社」であれ、中小・中堅企業の中にはしっかりと成長している会社がたくさんある
・社会で実権を握っている権力者に圧力をかけるとき、そのやり方には大きく「オピニオン」と「エグジット」の二つがあります。
・そもそも画期的なアイデアを生み出す人は若い人が多い
・「壊れるもの」は時間を経過するごとに老いていきますが、「壊れないもの」は時間を経過するごとに若返っていく
・むしろ積極的に、若い時期に脚光を浴びることは避けたほうがいい
ベストセラー著者・山口周氏の新作。
ぜひ、読んでみてはいかがでしょうか?
『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』光文社新書
山口周/著