ウィングの分類方法――様々な自閉症(3)
岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』

 

あとは、これもウィングが提唱した分類方法だが、行動特性によって自閉症を4つ(4番目を落として、3分類にすることも多い)のグループに分けることがある。

 

1. 孤立型
2. 受動型
3. 積極奇異型
4. 形式的で大げさな型

 

これも、自分の子どもの特性を理解し、いまあるいは近い将来にどのような困難に直面しそうか、ならばどのような能力を伸ばす必要があり、どのような環境を整える必要があるのか、といった理解や準備に役立つ。

 

孤立型はともすれば、おとなしくていい子で通ってしまうので、本人が手助けを必要としていても、周りの大人がそれに気付かないことがある。

 

受動型は比較的周囲に愛してもらいやすく、療育センターなどでも穏やかに過ごせるのだが、一方で悪意をもった誘いに気付かなかったり簡単に受容したりしてしまったりするので、大人になったあともだまされないかが心配である。

 

積極奇異型は名前の通り、奇異なことをするのである。どんな奇異さ加減かは人によってまったく異なるが、1日中、川に石を投げ続けてもまったく飽きなかったり(周囲の大人は飽き飽きだ)、映画を見て気に入ったセリフを1ヶ月間反復したりしている。もちろん、ぼくの子のことだ。一度お医者さんに「3分類のなかでは、一番知能が高いと言われていますよ。よかったですね、あっはっは」と励まされた(?)ことがあるが、決して断じて絶対にそんなにいいものではない。何か変わったことをしでかす度に、幼稚園や学校に呼び出されるコストを想像してみて欲しい。

 

でも、これはたぶん遺伝するのだ。何よりもまずぼく自身が積極奇異型で、全然運動など得意でないくせに、レーシングカートが大好きで二度死にかけたことがあるし(車載カメラが空を写したときの、ドライバーの死亡率はそれなりに高い)、決断力も判断力も乏しいくせにウルトラライトプレーンやモーターパラといったスカイスポーツに手を出し、高速道路に不時着しそうになって死にかけたことがある。スキューバダイビングは、そのために小型船舶1級を取得するほど好きだが、注意深くないので酸素ボンベのバルブを開けずに海にエントリーしたことがある。バディがいなかったらまずいことになっていた。

 

家族の中では随一の甘党なので、明らかに女子会しかやっていないと思われるスイーツブッフェに1人でよく出かけていって奇異な目で見られるが、あんまり気にならない。でも、きっといつか通報されるのだろう。

 

いずれにしろ、一口に自閉症と言ってもさまざまな表出の仕方があるので、まずは我が子の個性を知ることが重要である。また、周囲にもそれを伝えていった方がいい。自閉症が「鬱ぎ込みがち、閉じこもりがちな子」だと思っている人はまだまだ多い。

 

そういう人に、受動型のおおらかでにこにこした感じの子や、積極奇異型の知らない人にもやたらと話しかけ、一方的に1時間ほどしゃべり続ける子などを見せたときの反応はなかなか面白い。嫌がられるかもしれないけれど、そういうプロセスの積み重ねで、少しずつ社会に障害の認知が広がっていくのだと思う。

大学の先生、発達障害の子を育てる

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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