こだわり抜いて作られた「プリンスホテル」のPBブランドのクッキー缶
中田ぷう「素晴らしきお菓子の缶の世界」

ryomiyagi

2020/10/09

お菓子の缶。それは私たちの暮らしのいちばん身近にある“芸術品”。ただお菓子を入れて売っているのではなく、中には思わぬ名画が使われていたり、著名なデザイナーが手がけていたりするのです。お菓子の缶を集めて40年以上。フードジャーナリストのわたくしこと中田ぷうが、知れば知るほど奥深い“お菓子の缶”の世界へご案内します。

 

 

「プリンスホテル」のエグゼクティブパティシエ・内藤武志氏と東京・大田区にある焼き菓子専門店「メゾン・ド・プティフール」の西野之朗オーナーシェフのコラボ商品があるのをご存知ですか? 焼き菓子マニアにはたまらない2人の共演から生まれた「ブーケ・ドゥ・ビスキュイ」。小さいサイズの缶が売れる今のお菓子業界の流れの中、M缶が人気なこの商品。その魅力に迫りました。

 

甘く…でもファンシーになり過ぎない、大人の女性のためのデザイン

 

 

初めてこの缶を見たとき「わ、かわいい! でもおしゃれ」という感想を持ちました。
メインカラーは品あるロイヤルブルー。そしてところどころにピンクが使われているのですが、“かわいらしい暖色系ピンク”ではなく落ち着いたトーンの寒色系ピンクが用いられており、かつ間に金色のリボンもあしらわれていることから“ただかわいいだけ”のデザインでないことがわかります。
詳しいことはここでは省きますが、缶にこうした色づけをする作業は、紙に印刷するのと違って単純な作業ではありません。何度も何度も重ね塗りをして色をつけていきます。
私のような“究極の缶マニア”は、この缶の色を見ただけでどれだけ手間がかかったかがわかります(笑)。
事実、開発者によるとこの缶の「色」に関しては相当こだわったようで、理想の色になるまで何度も試作と協議を重ねたとのこと。
色というのは大切です。
青とひと口に言っても、空の青、海の青、川の青、そして北斎の青、ゴッホの青とさまざまな青が存在し、そしてその色が生み出すイメージというのは人の心に残ります。
それだけに“たかが缶の世界”と思うかもしれませんが、「プリンスホテル」だけに限らず、各メーカーの担当者たち、そして缶を作る会社の人たちはとことんこだわっているのです。

 

開発に半年以上。2018年11月にデビュー

 

 

皆さんもご存知の「プリンスホテル」の始まりは、前身である箱根土地株式会社にさかのぼること今から約100年前。皇族の邸宅や別荘の跡地をはじめ、有数のリゾート地に建てられた日本を代表する老舗ホテルチェーン。昔からさまざまなホテルで「ホテルセレクション」として日用品から食材までがホテルの売店などで売られていますが、「プリンスホテル」では従来「プリンスホテルセレクション」として販売していたプライベートブランドのラインナップを強化するプロジェクトが2016年に発足。この際、エグゼクティブシェフパティシエである内藤氏がバームクーヘン、リーフパイ、カステラ、柚子金柑パウンドケーキなどを監修。この成功を受け、クッキーに着手しようということになり、生まれたのが「ブーケ・ドゥ・ビスキュイ」です。

 

ただ、自社でクッキーを作るのではなく、専門店と組むことで顧客のニーズをさらに満たし、その選定先は市場調査を行い、「メゾン・ド・プティフール」と共同開発に至ったとのこと。社内満場一致で、ここのクッキーのおいしさに手が挙がったといいます。
わかります。「メゾン・ド・プティフール」のクッキーのおいしさは、ちょっとほかと比べものにならないですから。あのサクサク加減、バランスの取れた甘さ、どこをとってもおいしく、私も自分の鉄板手土産リストに入れているくらいです。

 

当初の目論見がうれしく外れ、S缶よりもM缶が人気

 

「ブーケ・ドゥ・ビスキュイ」(左)M缶3780円、(右)S缶2160円

 

今、お菓子の缶の世界はどんどん“縮小化”の流れになってきています。昭和の時代は、「大は小を兼ねる」とばかりに贈答品は大きいものが好まれ、デパートのお菓子売り場にも大きな缶があふれていました。
しかし今、見かけなくなったと思いませんか。“贈答”の時代からちょっとした手土産の時代に変わってきたためです。
そのため手土産を持って行く方ももらう方もバッグに入る大きさが好まれるようになり、缶菓子は今、どんどんサイズが小さくなってきています。
そんな時代の流れも見込んで「ブーケ・ドゥ・ビスキュイ」もS缶とM缶を用意したものの、S缶の方がお客様に好まれるだろうと予想していたのだとか。
ところがこの予想通りにはならず、M缶の方が売れているそう。ホテルのお菓子というのは手土産やプレゼントの需要が多いものですが、実際このクッキー缶をプレゼントした人たちが相手のあまりの反応の良さに驚き、自宅用も購入し、その際、多少高くても種類が豊富なM缶を選ぶという“いい循環”が起きているのだそう。
見た目も味も、消費者が納得するものを作れば、例え多少値段が高くとも買い手は出す。でもこの循環が生まれてこそ、“本当の商売”だと私は思っています。

 

抹茶ではなく煎茶を使ったクッキーは、ぜひ食べてほしい。

 

 

缶に中には、プリンスホテルオリジナルクッキーとメゾン・ド・プティフールのクッキーが入っています。
サブレ・フランボワーズやサブレ・シトロンなど大人向けのフレーバーがそろいますが、クロケットなどは子どもも喜ぶ味。安心して子どもやお孫さんがいるご家庭へのプレゼントにも使えます。
でも中でも私がおすすめなのが「サブレ・ジャポネ」。缶左下の緑色のサブレなのですが、こちら抹茶ではなく煎茶を使用。そのためとてもクリアで程よい苦味のある、大人味のサブレに仕上がっています。香りもよく、食すと煎茶の香りが鼻を抜けます。ほかでは食べられない逸品ですので、これはぜひ食べていただきたい! ちなみに使用している煎茶も同じ「プリンスホテル」プライベートブランドの煎茶を使用。このお茶もとてもおいしく、手軽に買えるペットボトル入り商品(180円・税込み)もあるので機会があったらぜひ味わってみてください(プリンスホテル内売店やオンラインストアで購入可能)。

 

 

プリンスホテル WEB:https://www.princehotels.co.jp/selection/cookie/

 

 

「素晴らしきお菓子の缶の世界」

中田ぷう

ライター・編集者。缶収集家であり、3歳のころからお菓子の缶を集め始める。現在6畳一間が新旧の缶で埋め尽くされ、家族に迷惑がられている。一方でカルディ歴26年、コストコ歴19年のキャリアを持ち、業務スーパーマニアとしても雑誌やTVでも活動する。インスタグラム:@pu_nakata
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