akane
2019/05/07
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2019/05/07
浅川あやさんが家づくりの為に二宮に引っ越し、仮住まいを始めてそろそろ1年が過ぎようとしています。当初の予定では、今年の2月には棟上げが完了し、着々と建設が進んでいるはずでした・・・。
しかし、予定とはあくまで未定であることを、あやさんは実感されている昨今なのです。予期していなかった問題が出てきたり、役所とのややこしいやり取りが山積していたり、現場監督との思い違いがあったりと、家づくりという蓋を開けてみて、初めて気づくことも多いのだと知りました。
今回は、そうした家づくりに纏わる壁、つまり乗り越えなければならない事柄を掻い摘まんで教えてもらいました。いわゆる分譲地でない場所に家をつくるには、少なからず困難があることを知っていただけると思います。
「整備されていない土地に家をつくる場合、家本体だけでなくインフラの工事も必要になります。我が家はプロパンなのでガスは問題ないのですが、水道については上下水道の両方を家まで引く工事が必要でした。電気は工事が滞ってしまうので早々に仮設電気を引き、それから、近くの舗装された道路から我が家までの道の整備も必要でした」
あやさんの購入した土地は、市街化調整区域というものに属しており、一般的には建物の建築が許可されない場所なのです。しかし、小高い丘は藪が繁っているとは言え、数十年前まで住居として使われていた廃屋が残されている状態で、敷地は多くの住宅に囲まれているのも事実です。手つかずの森林を開拓するというのとは、まったく異なります。
「それでも、開発の申請には時間がかかり、予想よりも長く丸一年を要しました。もし、私と同じような調整区域に建築を考える方がいるなら、土地の承認には時間がかかることを念頭に置かれるべきですね」
建築に関しても予想していたより申請に時間がかかったそう。
「住居は新築するのでいいのですが、店舗に改築する予定の洋館は築80年以上なので、現在の建築基準法には合っていません。だから、どのように安全性を保つかを証明する必要があるんです。また、知らなかった地下通路が存在していたり、大きく育った木の根っこが建物のなかに侵入していたりと、考えもしなかった問題が出てきました。古い物件は魅力も多いのですが、クリアしなければいけないことも背中合わせにあるんです」
それに加え、銀行とローンを組むにも壁があるようです。
「調整区域だと結構大変で、借りられる銀行も限られました。我が家の場合、マンションを購入したときや、鎌倉で家を新築した際は、大手銀行とローンを組みましたが、今回はダメでした。調整区域であっても一定の条件をクリアしているということで地方銀行がOKしてくれました」
予期できないことが起こることも踏まえ、予算は余裕を持ち、無理のない返済計画を考えることがマストであるようです。時間が長引けば、仮住まいへのコストも嵩みます。
けれど、もちろん苦労ばかりではないから前を見ていられる。あやさんの頭のなかには未来予想図がしっかりと描かれています。
「店舗となる洋館の建具は基本的に残します。ステンドグラスのある窓など、建具の風合いがあまりに素敵で、この物件を購入したと言ってもいいのですから。入り口のドアもメンテナンスして使い、ボロボロの天井は取って古い小屋組がそのまま見えるようにします。置き去りにされていた扇風機や掛け時計、照明のガイシもアクセントになると思っています」
実現したい夢があるから、それに向かい知恵を絞り、面倒な交渉事や事務的作業もこなす日々。今までもそうやって、いつだって何ごとも諦めずに生きて来たから、ヘコタレないのです。それを支えているのはハッキリとしたイメージ。それを言葉にして欲しいと問いかけると、次の言葉が紡がれました。
美しい光と影。
古いものと、これから古くなるものたち。
本物だけが持ち得る素材感と存在感。
ときを感じさせる味わい深さ。
温かくも凛とした空間。
そう「日用美」は、こうした場所になるのです。
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