巨人軍の2010年代をプレイバック【2014年】球団史上屈指の貧打ながら「試合巧者」でレギュラーシーズン1位の座に
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/05/25

新型コロナウイルスの影響で、開幕の見通しが立たないプロ野球。
こんな時だからこそ、過去を振り返ってみるよい機会かもしれません。そこでプレイバック企画として、お股クラスタの一人、ゴジキ氏(@godziki_55)に2010年代の巨人軍を振り返ってもらいました。

 

 

 

2014年
シーズン成績:82勝61敗1分 勝率.573 1位
ポストシーズン成績:CS Final1勝4敗

 

このシーズンを通して印象に残ったことは、リーグ優勝した2012年や2013年と比較しての貧打ぶりだった。チーム打率はリーグ5位、打率ランキングTOP10に巨人の選手は誰もいなかった。規定打席に達した阿部慎之助、坂本勇人、村田修一と言ったレギュラー陣は成績を落とし、長野久義の打率.297がチームトップ。打率3割に到達した選手すらいないシーズンであった。

 

しかし、この年の巨人は最優秀防御率とセリーグMVPに輝いた菅野智之を中心としたリーグトップの防御率、失策数、与四死球、失点数を誇り、守備範囲が広い新加入の片岡治大、坂本勇人の二遊間を中心としたディフェンス力が光った。さらに、シーズンの重要な試合において「試合巧者」ぶりを発揮し、他チームの脅威となった。

 

その象徴が、リーグトップの盗塁数と得点圏打率である。チーム打率、犠飛数、四死球数は5位で、併殺打数や犠打数はリーグワーストではあったが、得点圏打率の高さから要所で得点し、僅差で逃げ切る試合が多いシーズンだった。
実際、この年の巨人は終盤や勝負所で1点にこだわる野球を意識的にしていた。全体的には貧打だが要所で1点をもぎ取った上で、余計な1点を与えない。シーズンの早い段階でこうしたスタイルにシフト変更し、スタメンにはこのシーズンで20盗塁以上を記録した坂本、片岡を中心に盗塁ができる選手をなるべく多く並べた。
また、終盤や勝負所では、代打の切り札である高橋由伸や新加入の井端弘和を起用。2アウトからでもランナーが出た際は、高い確率でホームへ帰ってこれる代走の切り札である鈴木尚広を置いて1点をもぎ取りにいった。

 

下記は2014年シーズンの、接戦試合のデータである。

 

1点差の勝敗 23勝19敗 勝率.548
2点差の勝敗 19勝8敗 勝率.704
3点差の勝敗 13勝8敗 勝率.619
4点差以上の勝敗 27勝26敗 勝率.509

 

上記を踏まえると、3点差以内の勝率は.611で貯金20だった。最終的な貯金が21なことから、こうした接戦で競り勝ったことが、最終的な順位に大きく影響したことが分かる。またこのシーズンの巨人は、延長戦でも13勝を挙げている。接戦の展開や延長戦と言った競り合いに関して、非常に勝負強いシーズンだったと言えるだろう。

 

また、交流戦で優勝を果たし、最下位に終わった広島と11位だった阪神に差をつけられたことが非常に大きかったことは間違いない。特に活躍したのは投手は小山雄輝、野手は亀井善行だろう。亀井は交流戦で、打率.356 3本塁打 10打点の成績を残してMVPに輝いた。小山も、交流戦優勝を決めたソフトバンク戦を含む、3勝0敗防御率1.33の成績を残し、大きく貢献した。

 

このシーズンは、2012年や2013年のような選手個人の力以上に、原辰徳監督の長年培ってきた試合運びの巧さや運用力、要所で勝ち切れる「勝者のメンタリティ」が顕著に現れたシーズンだっただろう。

 

しかし、クライマックスシリーズでは、優勝争いによる消耗や、大黒柱の菅野がシーズン終盤の怪我により欠場した影響もあり、力尽きた。阪神にストレートで敗れ、日本シリーズ進出を譲った形となった。

 

【主な先発陣】

 

菅野智之 12勝5敗 158回2/3 防御率2.33
内海哲也 7勝9敗 144回2/3 防御率3.17
杉内俊哉 10勝6敗 159回1/3 防御率3.16
大竹寛 9勝6敗 129回 防御率3.98
小山雄輝 6勝2敗 93回1/3 防御率2.41

 

【主な救援陣】

 

山口鉄也 60試合 4勝3敗35H2S 防御率3.04
西村健太朗 49試合 4勝4敗16H6S 防御率2.98
マシソン 64試合 6勝6敗8H30S 防御率3.58
久保裕也 48試合 4勝4敗11H 防御率4.73
青木高広 38試合 2勝2敗9H 防御率2.45

 

【主な野手陣】

 

長野久義 打率.297 13本 62打点 OPS.801
坂本勇人 打率.279 16本 61打点 OPS.765
阿部慎之助 打率.248 19本 57打点 OPS.765
村田修一 打率.256 21本 68打点OPS.732
ロペス 打率.243 22本 57打点 OPS.749
アンダーソン 打率.319 15本 50打点OPS.897
片岡治大 打率.252 6本 32打点 OPS.644
橋本到 打率.256 4本 35打点 OPS.653
井端弘和 打率.256 3本 16打点 OPS.657
高橋由伸 打率.286 6本 29打点 OPS.851

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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