BW_machida
2020/07/29
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2020/07/29
優勝候補が大会序盤で敗れる大会
この大会序盤は、近年まれに見る大波乱だったに違いない。
センバツを制し、関東大会でも敵なしだった浦和学院が衝撃の1回戦敗退を喫した。相手は上林誠司を擁する仙台育英だったが、小島和哉が足を攣るなどのアクシデントもあり、まさかの乱調。乱打戦の試合展開となった。
埼玉県大会では、完全試合を達成するなどコンディションは万全のはずだった小島だが、甲子園開催前にピーキングを持って行き過ぎたことは否めなかった。序盤から6失点するなど、浦和学院からしたら想定外の展開だっただろう。
もちろん、劣勢の展開を跳ね返すだけの力が浦和学院打線にはあった。いとも簡単に追いつき追い越した浦和学院。しかしそれでも小島の調子は上がらず、再び追い付かれてしまう。
小島は9回に心身ともに力尽きて交代し、2番手として山口瑠偉がマウンドに上がるが、仙台育英打線の勢いを止められずサヨナラ負けを喫した。
この大会で優勝した前橋育英に秋春の関東大会で唯一土をつけているのが浦和学院であり、これほど完成度が高いチームは他になかったが、ピーキングの持っていき方を誤ったことと、2012年と同様にエースを引っ張りすぎたことが響き勝機を逃した。
その浦和学院に勝利した仙台育英も、チームの主軸である上林誠司が不調という懸念材料はあった。上林は1年秋から4番に座り、3度の甲子園を経験している。2年時には明治神宮大会で優勝を果たし、2年夏の甲子園では3試合で5安打2打点、3年春のセンバツでも3試合で5安打6打点の結果を残したが、3年夏の甲子園は打撃が不調で、2試合で1安打0打点に終わった。これまでチームを引っ張ってきた主軸の不調は本人だけではなくチームにも影響し、内田靖人を擁する常総学院に惜敗した。
また、夏連覇を目指した大阪桐蔭も3回戦で姿を消した。
相手は2012年の夏に準決勝で対戦した明徳義塾だったが、エース岸潤一郎を前に峯本匠のランニングホームランの1点に抑えられ、敗退した。逆に、明徳義塾は前年の準決勝の借りを返す結果となった。
2年生エース高橋光成、前橋育英を優勝に導く
優勝候補が大会序盤から敗退する大波乱の大会だったが、2012年夏の松井裕樹やセンバツの安楽智大のように2年生ながらもチームを牽引し、優勝に導いた投手がいた。前橋育英の高橋光成である。準決勝終了時まで41イニングを投げて防御率0.00を記録し、2年生とは思えない完成度でチームの勝利に貢献し続けた。横浜や常総学院などの名門を抑えた上で決勝に進出しているので、実力はホンモノだった。決勝の延岡学園戦も満身創痍ながら完投勝利を挙げ、前橋育英の初優勝に貢献した。
松井裕樹×森友哉の夢のバッテリーで準優勝したU18
この年は甲子園だけではなく、U18の注目度も高かった。
前橋育英の高橋光成や済美の安楽智大といった2年生エースや松井裕樹、山岡泰輔、田口麗斗と言った実力ある投手も選出された。さらに、野手では2大会連続で森友哉が選出され、渡邉諒や上林誠知、内田靖人、若月健矢といった選手も集まった。
大会を通じて投手陣は躍動。松井裕樹は20イニングを投げて27奪三振を記録するなど、国内だけではなく世界に通用する投球を見せた。
また、山岡もダルビッシュ有が大会中にTwitterで絶賛するレベルの投球を見せて、大会通して防御率0.00を記録した。
野手陣は、2大会連続で選出されこの大会では打点王に輝いた森友哉を中心に、チーム打率.330を記録するなど木製バットへの対応力の高さを見せた。結果的には準優勝に終わったものの、監督は大阪桐蔭の西谷浩一氏が務めたことや、後にプロで活躍する選手が多く選出された大会でもあり、近年では最もバランスの良いU18だったように思う。
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