BW_machida
2020/08/26
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2020/08/26
春センバツ初日と夏の最後を飾った好カード履正社対星稜
センバツ初戦と同じ対戦カードとなった奥川恭伸を擁する星稜対井上広大を中心とした強力打線履正社による夏の甲子園決勝は、履正社打線の完成度がホンモノだということを見せつけられた。
奥川は大会通じてほとんどのイニングを投げているため、ベストコンディションではなかった。ただ、それにしても決勝では履正社の各打者がなかなか空振りせずに捉える場面が随所に見受けられた。 9回を投げて6奪三振と、奥川に求められるレベルからすれば不完全燃焼で終わったと言える。
奥川は変化球が全体的に緩い傾向があるため、ワンランク上のレベルの投球をするためには「スラッター」などを覚えて実践できるかが今後の鍵である。
この試合の3回に奥川の甘くなった緩い変化球をバックスクリーンに放り込んだ井上は、大会を通じて良い場面で打点をあげており、U18代表の4番としても見てみたいと思えた選手だった。
※決勝戦にて井上広大のホームラン
高めの緩い球とはいえストレートも頭にある中でこの決勝でスタンドまでもっていくあたりこのメンタリティとリストの強さは4番らしい4番になれる素材だろ
pic.twitter.com/EhZcsdvSDv— ゴジキ (@godziki_55) July 18, 2020
星稜も7回に追いつき意地を見せたが、それ以上に疲れが見えていた奥川から8回に勝ち越しの追加点をあげた履正社打線はさすがだった。
履正社は大会を通じて、井上を中心にチーム全体として高い打力を誇ったが、やはり春に奥川投手に17個の三振を奪われた屈辱的な敗退が、夏に向けての成長に繋がった。
決勝で対戦した奥川以外にも、霞ヶ浦の鈴木寛人や津田学園の前佑囲斗、明石商の中森俊介といった大会屈指の好投手らを打ち崩した上で勝ち進んでいた。
そして最後は因縁の奥川投手を攻略して優勝するという、この上ない令和最初の夏になったのではないだろうか。
佐々木朗希や西純矢と言った好投手揃いの世代
この世代で最も注目を浴びていた選手は佐々木朗希だろう。
2年の時から奥川や西純矢と同様に注目されており、最速163km/hのストレートを投げる投球スタイルで連日報道の嵐であった。
投手のボールスピードが年々上がってきているとは言え、高校生のレベルではとてもまともに打てないボールである。
夏が始まるまでは「完成度の奥川、ポテンシャルの佐々木」と評価していたが、奥川と同様に佐々木も高校生とは思えない完成度の高さがあり、予選では29回を投げて2失点という素晴らしい成績だった。もちろんポテンシャルも兼ね備えており、7〜8割ぐらいの力感でも150km台を出してたように思えた。
元々の素材を見ると、水準レベルの投球術やスラットを完璧に取得したら一気に球界トップクラスになりそうな投手だ。
次に西純矢もこの世代でトップクラスなのは間違いない。
奥川や佐々木といったビッグネームに隠れがちだが、この2人と違う世代だったら間違いなく世代No.1投手だ。気迫あふれる投げっぷりの良さはもちろんのこと、要所で三振を奪える変化球も質が高く、あとは安定して同じクオリティのボールを投げられたらプロの一軍でも勝てる投手になるだろう。
2010年代高校野球の総括
2010年代の総括として見ると、大阪府代表が2017年から3年連続で春夏どちらかは甲子園で優勝という安定したレベルの高さを示した。さらに近畿勢まで広げて見ると、2014年から2019年まで6年連続、春夏どちらか又は両方の甲子園大会でベスト4に勝ち上がる強さを見せていた。
集客面を見ると、毎年満員御礼の試合の日もあり、高校野球の人気の高さが顕著に現れた。
高校野球の立ち位置は、「教育の一環」の「部活動」だが、毎年大多数のお客さんを集める人気イベントでもある。
特に夏の場合は、大会期間中はプロスポーツを差し置いてスポーツニュースのメインを飾り、学生のスポーツという括りを超えた存在だ。地上波のバラエティ番組で特番が放送されるぐらいの人気は、「アマチュアスポーツ」では異例である。
県大会の予選から甲子園出場・優勝までの各校のストーリー性や、一発勝負のトーナメントの儚さ、高校時代という青春への共感、ヒーローの誕生など数えきれない要素が老若男女問わず感動を、与えてきたのは間違いない。
さらに、大衆からは「夏」=「甲子園」は「高校野球」とイメージされることも多い。
その背景には、学生スポーツの中では群を抜く人気の高さや、これまでの歴史で構築されてきたブランド力があるからだろう。学生スポーツやアマチュアスポーツというカテゴリーの中でここまで大きく人を動かすブランド力やコンテンツ力は群を抜いている。
このように、アマチュア野球ながらも文化や伝統があり、トップクラスの人気を誇る高校野球はこれから先も大切にしていくべきだろう。
古き良き時代のものとして残すべきものは残していきながら時代に適応し、今後さらにドラマ性ある試合を歴史とともに作り上げていってほしい。
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