akane
2019/07/09
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2019/07/09
運動などによるアキレス腱断裂をはじめとするスポーツ障害の一部には、AGEs(終末糖化産物:タンパク質が糖と結びついて変性したもの)により、筋肉や腱、靱帯などが弱くなって起きるものも多くあると考えられる。
運動するからといって、血糖値を上昇させるスポーツドリンクを飲んではいけない理由はここにもある。
運動するから、何を食べても血糖値は異常なほどには上がらず、健康的だと考えている人もいる。
しかし、それは間違いである。通常、運動直前に食事は摂らないであろうし、夕食も通常は運動後である。そうすると、食後は糖質摂取量に応じて食後高血糖を起こすことは当然である。
食後高血糖により糖化が起き、AGEsの増加が起きる。運動習慣があっても、食後高血糖、インスリン抵抗性を認めることは珍しくない。
(Thomas,F. et al. Blood Glucose Levels of Subelite Athletes During 6 Days of Free Living. J Diabetes Sci Technol. 2016,Nov 1;10(6):1335-1343.)
競技の種類やポジションによっては、体重を要求されることもある。
柔道やアメリカンフットボールのラインメン、相撲、陸上のハンマー投げや、砲丸投げなどの投てき競技などのアスリートである。
そのようなアスリートは、筋トレはもちろんだが、食事で体重を増やすので、インスリン抵抗性を招きやすい。
実際、陸上の投てきのアスリートでは、30%程度はインスリン抵抗性を示すという研究がある。
そのようなアスリートが、糖質を過剰に摂取すると、食後30分の血糖値のピークは非常に高く、食後2時間後の血糖値は、正常範囲にありながら正常の人よりも上昇幅は大きく、食後に非常に高インスリン血症を認め、食後の中性脂肪値の増加も食前の1・7倍、正常な人の3倍にもなっている。
食後の高中性脂肪は動脈硬化、心血管疾患のリスクを高める。
(Hasegawa-Tanaka,T. et al. Changes in Blood Glucose and Lipid Metabolic Parameters After High-Carbohydrate Diet Ingestion in Athletes with Insulin Resistance. Juntendo Medical Journal. 2016,62 (4): 323-329.)
また、筋肉トレーニングなどで筋肉を増量するためには、糖質を摂り、インスリンをたくさん出すことが必要だと考えている人もいる。
筋トレの後にタンパク質を摂ると、確かに筋肉量は増加するが、そこに糖質を加えると、タンパク質のみの場合よりも増加量がやや少なくなる。
68人を対象に12週間の筋トレを行い、トレーニングの後に3種類のドリンク(炭水化物のみを含むドリンク、タンパク質のみを含むドリンク、タンパク質+炭水化物を含むドリンク)を摂取した研究では、筋肉の増加量は、タンパク質のみのドリンクのときが最も多く、炭水化物を加えることで増加量が低下してしまうことがわかった。
(Hulmi,JJ. et al. The effects of whey protein with or without carbohydrates on resistance training adaptations. J Int Soc Sports Nutr. 2015,Dec 16;12:48.)
そして高血糖になれば、やはりAGEsは増加してしまう。
AGEsの蓄積した筋肉や腱や靱帯などは質が悪く、その質の悪い組織は入れ替わりが非常に遅いので、結果的にはパフォーマンスの低下や故障の原因となる可能性がある。
練習で故障してしまったときに、オーバーユース(練習し過ぎ)を疑うことがあるが、同時に、糖質過剰摂取によるAGEsの蓄積も考えた方がよいかもしれない。
アスリートが食後高血糖になることは避けるべきだと考える。
しかし、アスリートは、パフォーマンスを向上させ、疲労から回復するために、高炭水化物の食事を摂ることが重要だと思い込まれているし、実際に推奨している人もいる。
そして、知識のないコーチや先輩が「食べることもトレーニングのうちだ!」と言って、無理やり白米をドンブリ何杯も食べさせるのである。
これはただのパワハラ、虐待である。
白米で体重を増加させ、その後筋トレをすれば、脂肪が筋肉に変化すると本気で思っている指導者もいるだろう。
運動時には糖質たっぷりのスポーツドリンクを飲み、運動後には糖質たっぷりの食事を摂る。
危険な食習慣である。
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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