akane
2019/01/31
akane
2019/01/31
「あの人とは話しやすい」「あの人とは話しにくい」と、相手によって話しやすさに違いを感じている人は多いと思います。コミュニケーションは、基本的に話し手がいて、聞き手がいる二人の関係で成り立っています。これは吃音のある人でも同じです。そして吃音のある人は、聞き上手な人を敏感に見分けています。では、吃音者が話しにくいと感じている人を挙げましょう。自ら吃音者で、九州大学病院に勤務する医師の菊池良和さんが刊行した『吃音の世界』(光文社新書)から抜粋してお届けします。
・大きな声で感情的に怒る人
・吃音が出たときに馬鹿にする人
・こちらが話をしているのに、話を最後まで聞かず、自分の話題に変える人
・せっかちな人
・自分が話したのに、リアクションがない人
・「ゆっくり話しなさい、深呼吸して話しなさい」など、話し方のアドバイスをする人
また、吃音のある人によって感じ方は違いますが、
・吃音が出ているときに、良かれと思って言葉の先取りをする人
も、場面によっては話しづらいと感じているようです。これは私の経験ですが、「お、お、お、お……」と言葉に詰まっていると、「おんせん?」と言葉を先取りされたことがありました。
しかし、このとき私が言いたかったのは、「おおいた」でした。こうしたケースでは、相手の言葉を訂正し、最初から自分の言いたいことを伝え直さなければなりません。私の経験では、言葉を先取りする人の半数は間違えます。
では、吃音者にとってはどういう聞き手なら話しやすいのでしょうか。それは、
・話し終える前に助け舟を出そうとする人ではなく、話し終えた後に助けてくれる人
です。
具体的には、話している最中は邪魔することなく内容を聞いてくれ、話し終えたときに内容にきちんと反応してくれる人です。それほど難しいことではないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではない人が多いのが現実です。特に、吃音のある人と接するとき、この「聞く力の差」は顕著に出てくるように思います。
どもる人とじかに接したことのない人は、こちらが努力して最後まで話し終えたのに、びっくりしてしまって何のリアクションも示さず、話が途切れてしまうことがあります。実際、私はそうした場面にしばしば遭遇してきました。
つまり、良い聞き方とは、相手のペースに合わせられるかどうかだということです。
そしてこれは、吃音のある人と接するときに有効なだけではなく、日常の会話においても重要なことではないでしょうか。
吃音のある中・高校生の誰もが抱えている悩みに、話が盛り上がっているときに思いついた一言が言えない、というものがあります。この一言を言えば爆笑になることがわかってはいても、どもりながらしゃべると場面がシーンとなるので言いたくても言えない――それが悔しいのだと。
つまり、表面上は吃音という姿がその人に表れているのですが、内面では話したいという発話意欲にあふれていることが多いのです。
以上、『吃音の世界』(菊池良和著、光文社新書)の内容を一部改変してお届けしました。
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