2020年のプロ野球シーズンに、東京五輪の影響はどれくらいあるのか?
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/01/28

2020年になり、56年ぶりに東京五輪が開催される。その中でも2008年の北京五輪以来、12年ぶりに野球が競技として復活する。このことはNPBのシーズンにどのような影響を与えるのか?お股クラスタの一人、ゴジキ氏(@godziki_55)に考察してもらいました。

 

 

2008年シーズン、北京五輪は選手やチームにどう影響したか?

 

参考事例として、北京五輪のあった2008年のシーズンを振り返ってみる。

 

この年、セリーグは前年1位の巨人が開幕カードでヤクルトに3タテされ、さらに小笠原道大の不調、二岡智宏の離脱などで序盤は苦しんだ。一方、阪神は開幕から圧倒的な強さで勝ち星を積み重ね、 7月8日時点で巨人に13.0ゲーム差をつけて、7月22日時点でマジック点灯しているという独走状態だった。

 

しかし、五輪を境に潮目は大きく変わる。

 

代表監督が星野仙一氏だったこともあり、阪神からは藤川球児、矢野輝弘、新井貴浩の3選手が代表に選ばれた。対する巨人は、上原浩治と捕手の阿部慎之助、韓国代表として李承燁が選ばれたが、小笠原道大や内海哲也などの投打の軸となる選手は選ばれない形となった。

 

チームで中軸を担っていた新井は北京五輪後に怪我の状態が悪化し、後半戦は長期離脱をし、阪神は打線に厚みがなくなった。また、中継ぎの酷使により、藤川が不在の期間は久保田智之やウィリアムスへの負担がさらに重くのしかかっただろう。

 

逆に、巨人はシーズン前半に不調だった上原と李承燁が北京五輪から復調し、後半戦は活躍。五輪の期間中も上原や李承燁同様に不調だった小笠原道大が復調したり、阪神戦に強く勝ち頭であった内海とグライシンガーを当てたりしたことで阪神を猛追。

 

シーズン序盤には不安定だった勝ちパターンも、この年の新人王に輝いた山口鉄也や越智大祐によって確立され、加えて現在はスター選手にまで登り詰めた坂本勇人の台頭なども上手く噛み合い、その結果として逆転優勝を果たした。

 

パリーグは西武が圧倒的な強さで優勝したが、8月時点で2位にいたソフトバンクが最下位になるという事態が起きていた。

 

ソフトバンクから代表に選出されたのは、杉内俊哉、和田毅、川崎宗則の3選手だった。五輪期間の投手陣は杉内、和田という先発の軸が抜けて、頼れる先発が大隣憲司だけという状況になった。

 

また、野手陣だと川崎は北京五輪中に負傷した足の怪我でその後も離脱し、当時中軸を担っていた小久保裕紀や松永信彦の高齢化によるシーズン終盤の疲弊も重なり、最下位に沈んだ。

 

東京五輪によるシーズン休止期間はどう影響するか?

 

今シーズンのプロ野球は、3月20日と例年より早い時期に開幕し、オールスター明けの7月22日から8月13日までの23日間、東京五輪を考慮して休止になることが決まっている。

 

これは、北京五輪で韓国がリーグ戦のシーズン休止を実施してベストコンディションで大会に臨んだ結果、金メダルを獲得している影響も大きいかもしれない。

 

韓国は、今回の東京五輪でもリーグ戦を7月24日〜8月10日の18日間は休止することを既に発表している。これによって、東京五輪の前哨戦の意味合いも含まれていたプレミア12同様、五輪も再び日韓の頂上決戦になる可能性はあるだろう。

 

また、シーズンの各球団における影響だが、アテネ五輪と北京五輪の過去2大会はオールプロで五輪に参加したが、その時はいずれも休止期間は設けられなかった。

 

過去、プロ野球のシーズン中に休止期間はほとんどないが、2002年に日韓W杯が開催された時は6月の試合数が例年より激減した。

 

それによって、開幕当初好調だった阪神は8連敗を喫するなど6月は4勝13敗と一気に失速した。一方で、5月まで阪神と首位争いをしていた巨人は変則的な日程に対応しつつ6月から独走し、そのままリーグ優勝した。

 

パリーグでは西武が9連勝、近鉄も10連勝と6月のこの時期の変則日程を味方につけて、その後も優勝争いを繰り広げた。

 

今シーズンも、この変則日程前後の戦い方が非常に重要である。

 

球団ごとの参加意欲による影響はどうなるか?

 

東京五輪の前哨戦と言われていたプレミア12では、シーズン後ということもあり、代表招集に対して球団ごとに意欲の差がはっきり分かれたと言っても過言ではない。

 

代表戦への意欲が高かったのがソフトバンクと巨人という、両リーグの覇者だったのは間違いない。

 

特にソフトバンクの場合は、打線の軸であった柳田悠岐がシーズン中の怪我や手術のため辞退、エースの千賀滉大もコンディションの考慮で辞退した中、代走の切り札であったスーパーサブの周東佑京やアンダーハンドの高橋礼、左殺しの嘉弥真新也、ルーキーだった甲斐野央といった選手を派遣。

 

代表戦でも難なく結果を残して優勝に導いた姿には、2010年代プロ野球界の盟主らしい層の厚さを感じた。

 

また、セリーグ覇者の巨人から招集された選手だと、山口俊は大会の公式球などに適応できず、丸佳浩も初見の投手や短期決戦への弱さを露呈したものの、シーズンMVPに輝いた坂本勇人は大会後半に復調し、田口麗斗、大竹寛、中川皓太といった中継ぎ陣は防御率0.00の活躍で優勝に貢献した。

 

プレミア12の優勝は、セパ王者の2球団が率先して代表招集に協力した点が非常に大きかったのではないだろうか。

 

しかし、東京五輪の場合はWBCやプレミア12とは違い、休止期間があるとはいえシーズン中だ。各球団や選手に対しては、非常に大きな負担や影響を与えると思われる。

 

ソフトバンクの場合は、2年連続で短期決戦への強さを見せているが、ペナントレースでも短期決戦のような戦い方をした上に主力が代表招集で離脱するケースが危惧される。そうなると、シーズン終盤に選手層の厚さで戦力を賄うことができないくらい疲弊してしまう可能性はかなり高い。

 

さらに、キューバが東京五輪出場となれば、日本シリーズMVPに輝いたグラシアルやデスパイネもキューバ代表として招集される可能性がある。代表から復帰後のグラシアルの調子を見ると、そのフォローも必要不可欠だ。

 

巨人の場合は、昨年シーズンリーグMVPに輝いた坂本やリリーフで万能な活躍を見せた田口、大竹あたりはもちろんのこと、昨年不調だった菅野も2年連続沢村賞の実績は充分であり、今シーズン序盤に復調の兆しが見えたら招集される可能性が高い。

 

その他にも正捕手の小林誠司や、夏場に強く守備面でユーティリティ性が高い岡本和真も代表に選出される可能性がある。日韓W杯の変則日程や北京五輪でシーズン中に代表招集をされる経験をしている原辰徳監督の運用力が、昨年以上に問われるシーズンになるだろう。

 

東京五輪開催が各球団や選手に与える負担や影響は、間違いなく大きいものではある。2008年のセリーグのように大どんでん返しもあるかもしれないが、例年とは違う日程によって選手のコンディションなどを含めた運用力やマネジメントがカギとなる。

 

その中で、各選手がベストパフォーマンスを残してファンを魅了し、シーズンもより良いものにしてほしいと願っている。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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