akane
2018/12/28
akane
2018/12/28
Genre: Roots Rock, Folk Rock, Country Rock, Americana
The Band (The Brown Album) – The Band (1969) Capitol, US
(RS 45 / NME 83) 456 + 418 = 874
Tracks:
M1: Across the Great Divide, M2: Rag Mama Rag, M3: The Night They Drove Old Dixie Down, M4: When You Awake, M5: Up on Cripple Creek, M6: Whispering Pines, M7: Jemima Surrender, M8: Rockin’ Chair, M9: Look Out Cleveland, M10: Jawbone, M11: The Unfaithful Servant, M12: King Harvest (Has Surely Come)
彼らの第2作であるこのアルバムは、ロックの、いや「北米の地にある音楽の」その良心面の守護者が本領を発揮した1枚として、高い評価を得た。
良心とは、なんだろうか。ときにそれは「世間の多数に押し流されない」ことを意味する。なにかというと反体制一色だった時代の片隅に、カウンターカルチャーの外側に立つようなロック音楽家もいた。その一部は、ルーツ・ロックと呼ばれる音楽性を指向した。ザ・バンドこそが、その急先鋒だった。
その堂々たる佇まいは、彼らの代表曲のひとつ、M3を聴けばわかる。演奏は巧みにして、決して「テクニック至上主義」ではない。人肌の温度感がある「オールド・タイムの音楽」の魅力にあふれている。このレイドバックした感覚が、のちに「アメリカーナ」と呼ばれるジャンルの醸造に大きく寄与していくことになる。
当時のロックの趨勢は、サイケデリック・ロックであり、ハード・ロックであり、実験音楽もあるし、ニューヨークではヴェルヴェット・アンダーグラウンドが暗躍している――という状況だった。だからザ・バンドは「まったく違う」時間軸のなかにいるみたいだった。とはいえ、保守反動的だったわけではない。なぜならば、彼らのこうした方法論は、たとえばボブ・ディランと同期したものでもあったからだ。
64年より、彼らはディランのライヴでバッキングを担当した。エレクトリック・ギターを持ったディランが旧来のファンから叩かれた、あの時期だ。ほどなくしてディランは、カントリー音楽の世界へと向かう。一部のファンはさらに怒った。しかしそもそもディランは、そのデビュー時ですら「フォーク・リヴァイヴァル」の人だった。つまり、つねに「大勢に逆らいながら」、自らの手で新しい時代を切り開こうとする人だった。そんな彼の一時期の僚友が、ザ・バンドだったというわけだ。
本作は、ディランとともにおこなった、伝説の「ビッグ・ピンク」セッションを環境的に再現するため、ハリウッド・ヒルズの豪邸が借り上げられ、そこで録音がおこなわれた。かつてはジュディ・ガーランドも住んでいたその屋敷の、当時の所有者はサミー・デイヴィス・ジュニアだったという。カナダ出身(ドラムス&ヴォーカルのリヴォン・ヘルムのみアメリカ人)の彼らが、夢見心地の環境のなかで生み落とした、土臭くもなつかしい、しかし「どこにもない」風景が詰まった1枚だ。
次回は30位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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